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フランスではムハンマドの冒涜も表現の自由の範囲内

 フランスはそうではない。フランスで施行されているのは共和国法であり、イスラム法的価値はそこには反映されていない。むしろ、イスラム法が禁じる預言者ムハンマドの冒涜を、表現の自由の範囲内として認めるのが共和国法であるという点において、両者の価値観は対極に位置すると言っていい。

デモ参加者は言論の自由についても強く主張している ©getty

 イスラム過激派との戦いはイデオロギー戦。これは実際にイスラム過激派と戦っているあらゆる当事者が共有する、極めて基本的な認識だ。

 マクロンは10月2日、新たなイスラム過激派対策法案を12月に閣議提出する予定だと演説した。新法案は、義務教育を3歳からに引き下げ、全国民に幼いうちから、特定の宗教や権力に囚われるべきではないという世俗主義を身につけさせることや、過激思想の源とされる外国人イスラム教指導者の受け入れを禁じ、指導者を国内で育成することなどを含む。仏調査会社ODOXAの調査によると、同法案を支持する仏国民の割合は8割にのぼる。

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世界中のイスラム教指導者に迫られる選択

 2015年1月にイスラム過激派テロリストが新聞社「シャルリー・エブド」の本社を襲撃した事件や、同年11月にパリ市街や郊外で相次いで銃撃や爆発が起きたパリ同時多発テロなど、フランスは相次ぐイスラム過激派によるテロに見舞われている。いま、仏の世俗主義、共和制は既に瀕死の状態にあるという危機感を多くの仏国民が共有しているのだ。

デモでは「私はサミュエル」という言葉が掲げられた ©getty

 世界中のイスラム教指導者は、あくまでもイスラム的価値を普遍的なものとして押し通し、フランスだろうとどこであろうと預言者ムハンマドを冒涜した人間が殺害されるのは自業自得だと主張し続けるのか、それともイスラム過激派テロとの戦いを優先させ非イスラム諸国とも連携し協力していくのか。いま、その選択を迫られている。