イスラム教は殺人を禁じている――イスラム教指導者たちも非難
仏メディアは今回、当該教師殺害を命じるファトワーを発行したとされるセフリウィについて、モロッコ出身であり国家治安の脅威とみなされる個人のリスト(Fiche S)にも記載され、長らく当局から過激派として目をつけられていたと報じている。斬首を実行した18歳のイスラム教徒がセフリウィのファトワーを知り、自発的に行動に及んだとしても全く不思議はない。
イスラム教徒がある行為を宗教的義務であると信じて実行する場合に必要なのは、“強い信念”と“行動力”のみである。一般にイメージされるような組織も、資金提供も、綿密な計画も彼らは必要としない。
この凄惨な事件については、イスラム世界のイスラム教指導者たちも声明を出している。
エジプトのイスラム学の殿堂であるアズハルとエジプトの大ムフティー(ファトワーを発行する人の意)シャウキー・アッラーム師はともに、イスラム教は殺人を禁じているとして当該事件を強く非難した。
仏当局による陰謀論も
一方、イスラム主義組織ムスリム同胞団の運営する世界ムスリム学者連盟(IUMS)の事務局長アリー・カラダギー師は、10月17日、「IUMSはフランス人教師殺害を非難すると同時に、人種差別的憎悪を煽り、宗教を攻撃した者を非難する」という声明を出し、被害者であるパティ氏が殺されたのは自業自得だと示唆した。さらにカラダギー師は同日、2回目の声明を出し、当該事件はイスラム教とテロを結びつけるために仏当局が計画したのであり、真犯人はまだ生きていると主張した。いわゆる陰謀論である。
カラダギー師は仏マクロン大統領について、「極右」で「十字軍イデオロギーの持ち主」とも述べている。
イスラム法は確かに、預言者ムハンマドを冒涜した者を死罪と規定する。実際、今もほとんどのイスラム諸国では、預言者ムハンマドを冒涜した者を厳しく罰している。しかしそれは、イスラム諸国で施行されている法がイスラム法の規定や価値を反映しているからである。