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2020/10/30

source : 文藝春秋 2011年12月号

genre : ニュース, 社会, 映画

「10代の少女の声ではないかということですが……」

「音声テープの再鑑定の結果が出ました! これまで30代の女性と言われていた犯人の声ですが、10代の少女の声ではないかということですが……」

 報告を聞いて、取材班は一瞬静まりかえった。犯人グループに「複数」の子どもが含まれているかもしれない……。事件の底知れぬ闇を見た思いがして、ぞっとしたことを記憶している。

 企業を脅迫する際、犯人グループは、録音した音声テープを電話口で流し様々な要求を伝えていた。警察が公開したテープは3本。その音声分析から、グリコを脅迫した1本は30代もしくは40代の女性の声、森永とハウスを脅迫した残りの2本が、男児の声だとされていた。当時、警察はこの2本のテープは同じ男児の声だと分析していた。

 ところが今回、このテープを科学警察研究所のOB・鈴木松美氏に最新の鑑定で分析してもらったところ、30代とされていた女性の声は10代半ばの少女だという衝撃的な結果が出たのだ。それだけではない。これまで同一人物と見られていた男児の声が収められた2本のテープも、別人のものだという鑑定結果が出たのである。つまり、この結果に基づけば、少なくとも犯人グループ(もしくはその周辺)には3人の子どもがいたことになる。警察が見立てていた「犯人像」は全く違ったものとなってくる。

「もう1人の男児」が存在するのではないか

警察が公開した脅迫電話の録音テープ(東京) ©時事通信社

 さらに取材班では「もう1人の男児」が存在するのではないか、という情報もつかんでいた。つまり「4人目の子ども」の存在である。取材班の記者が、当時捜査に深くたずさわっていた警察関係者から「言語障害もしくは障害のある男の子」だと思われる未公開テープの存在を聞いていた。これは丸大の脅迫の際に使われたもので、背景には「ワー」という声や子どもが「キャッキャッ」とふざけあうような声も入っていたという。

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