キャバクラの料金は通常1時間で1万円とか1万5000円とかが相場。2万円以上という店もある。このほかにウイスキーのボトルを入れるとなると当然、別料金となる。中には1本で100万円というシャンパンを置いている店もある。女の子たちの稼ぎはピンキリだが、月の売り上げが500万~600万円というかなり稼げる女の子もいる。このような女の子が結構な数いるから、スカウトバックのシステムによる利益は莫大になる」
夜の街の仕組みを一通り説明し終えると、関係者の男性は「要するに、女はカネになるということだ」と締めくくった。
コロナ禍で夜の街に変化が
賑わいが絶えず不夜城とも称された歌舞伎町だが、コロナ禍による営業自粛要請には抗し切れなかった。
客足が遠のき、看板を消灯し入り口ドアにカギをかけて、常連客の予約を取りつけてこっそりと「闇営業」で稼いでいた店があったほか、キャバクラ店の人気女性を常連客の求めに応じて居酒屋などに派遣して料金を取る「ギャラ飲み」なども行われていた。
ジリ貧状態のなか、客を呼び込むには稼げる若く美人の女性をさらにスカウトすることが重要視されるようになり、より腕の良いスカウトを囲い込むことが業界の最大テーマになったという。
新宿の暴力団業界に詳しい関係者が実態を明かす。
「キャバクラが闇営業をしていることが知れ渡ると、売れっ子のかわいい女の子がいる店には、客がこっそりとやってくる。平常時以上にかわいい女の子をいかにスカウトするかで、スカウト会社の売り上げに響くようになった」
このような状況で、歌舞伎町で手広く仕事をしている前出の最大規模のスカウト会社Aが“掟破り”の行為に乗り出したのだという。関係者が続ける。
「A社が同業他社の優秀なスカウトの引き抜きを始めた。これは業界では許されることではない。すぐに問題になった。A社のトップは双子の兄弟で、身長は190センチぐらいのマッチョタイプのコワモテ風。少々強引で、スカウト引き抜きも1度や2度でなく次々と起きて後を絶たなかった。引き抜かれたスカウト会社とすぐにトラブルとなり、もめ事が起きた」
トラブル解決へ向けて関係者が集まり話し合いが持たれたが、折り合いがつくことはなかった。解決に向かうどころか、話し合いが決裂したことで問題は肥大化。波紋を広げる一方、トラブルをめぐる関係者も増加していったという。
そして、この揉め事の調整役として解決に乗り出したのが、それぞれのスカウト会社とつながりのある暴力団関係者たちだった。しかし、トラブルの中心に登場するようになった暴力団関係者に、スカウト会社は強い抵抗を示し、火に油を注ぐことになる。
その結果、暴力団関係者の男たちが歌舞伎町の街中を練り歩き、トラブルの発端となったA社所属のスカウトを発見すると、数十人で取り囲み暴力を振るう事態となった。