死ぬ間際だからこそ明かされる、父のさまざまな秘密
一方で、第4話ではある秘密が明らかになる。寿限無の父親は自分であったこと、そしてその事実をずっと伏せてきたことを、寿三郎は、人生の最期だからと打ち明けてしまう。子どもたちは絶句する。さらに寿限無自身も、その事実を受けて寿三郎への対応を変える。
死ぬ間際だからこそ明かされる、さまざまな父の秘密。『俺の家の話』は、展開が進むにつれ、寿三郎が決していい父親ではなかったことをどんどん明かしていくのだ。
決して100パーセント善良なわけではない、間違いだらけの父親。「立派ではない父」をそれでも介護しなくてはいけない息子、娘の姿。それは寿三郎が父として立派であろう、威厳を保とうとする姿とは裏腹に存在する、家族のもうひとつの側面だった。
端的に言ってしまえば、異性からモテることを最期まで誇示したがる父の姿と、異性への欲に負けて間違った父の姿が、両方描かれているのだ。「男らしくある」ことにとらわれる寿三郎と、その父と向き合う子どもたちの葛藤は、『俺の家の話』のひとつの大きなテーマになっている。
介護を通していかに家族と向き合うか
第4話では父・寿三郎の間違いにスポットライトが当たったが、子どもたちもさまざまなかたちで間違う。
たとえば離婚した妻に期待を寄せてしまった寿一の姿、あるいは息子の発言に耳を傾けなかった舞(江口のりこ)の姿、あるいはさくらの存在に反発しつつも恋してしまう踊介(永山絢斗)もまた「間違った」人物のひとりなのかもしれない。
だが、家族と接するとき、一度も間違ったことのない人間なんてありえない。いつも間違って、その先でどうするかを、宮藤官九郎の脚本は丁寧に描く。まるで『カラマーゾフの兄弟』を通して、ドストエフスキーが善悪を超えて葛藤する人間たちを描いたように。
間違いだらけの父と、間違いだらけの息子、娘が、介護を通していかに家族と向き合うか。『俺の家の話』は、介護の話だけではない、2021年の日本で生きる家族の問題そのものを、笑えて泣けるドラマとして見せてくれる。