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「この木なんの木」「やめられない、とまらない」数々の名CMソングを生んだ作詞家・伊藤アキラさんは何がすごかったのか

2021/06/04

「この木なんの木、気になる木」という歌と曲をサラッと脳内再生できる日本人は多いことと思う。その作詞を手がけた作詞家の伊藤アキラさんが亡くなった。5月15日のことだ。死因は急性腎不全、享年80。この歌の正式なタイトルは「日立の樹」。1973年に日立グループ企業全体のCMソングとして発表し、作・編曲は御大・小林亜星さんが手がけた。初代歌手は『スーパーロボット レッドバロン』(’73年)の主題歌歌手としても知られる朝コータローさんだった。

「この木なんの木」のCMに登場したハワイ「モアナルア・ガーデン」にあるモンキーポッドの大木

 昨年亡くなった作・編曲家の筒美京平さんの『サザエさん』(’69年)の主題歌「サザエさん」もそうだが、約半世紀前に作られた歌が、いまだに土日の夕方~ゴールデンタイムに、毎週、絶えることなく流れ続けている事実は、あまりに驚異かつ偉大なことだと思う。

「やめられない、とまらない」のCMソングはまさに“魔法の歌”

 伊藤さんは、主に昔でいうところの“コマソン”、つまりコマーシャル・ソング、今で言うところの「CMソング」の世界で活躍した名作詞家だ。我が国のCMソングの生みの親ともいえる、レジェンドの作曲家・三木鶏郎(トリロー)さんに師事。三木さん主宰の「冗談工房」よりデビューを飾った。師匠の三木さんも「キリンレモンのうた」(キリンビバレッジ)など、昭和を代表する名フレーズを数多く生んだが、パダワン(弟子)の伊藤さんも負けてはいない。

 どれも甲乙なんてつけられるものではないが、筆者的には「やめられない、とまらない」の「かっぱえびせん」(カルビー)のCMソングが真っ先に脳裏をよぎる。それはもちろん、かっぱえびせん自体が大好きだからだが、一度食べ出すと、いまだに本当にやめられないし、止まらなくなるからだ。鶏が先か卵が先か? ではないが、本当に、このCMソングが先か? かっぱえびせんを食べてやめられず、止まらなくなった方が先か? 今ではもう思い出せない。まるでこの詞に体が操られているかのような、まさに“魔法の歌”だった。