基本的な特徴としては、徹底して頭韻と脚韻を踏み、そのリフレインで独特のリズム感を生み出すという作詞法で、一種、経文的、呪文的な魅力すら醸し出している。
「かもめが翔んだ日」『うる星やつら』……歌謡曲やアニメソングでも大活躍
歌謡曲・ポップスでは、’78年に渡辺真知子の「かもめが翔んだ日」が大ヒット。ある一定の世代には、フジテレビ系の大人気子供向けバラエティ『ひらけ! ポンキッキ』(’73年)の「はたらくくるま」が忘れられない方も多いのでは? アニメソングでも『うる星やつら』(’81年)の最初の主題歌で、ヒットした「ラムのラブソング」などを作詞。
この『うる星やつら』の男性主人公・諸星あたるの声を演じた古川登志夫さんと伊藤さんは意外にご縁が深く、同じ古川さん主演のTVアニメ『最強ロボ ダイオージャ』(’81年)や『The・かぼちゃワイン』(’82年)の主題歌・挿入歌の作詞も担当している。古川さんはTwitterで、『The・かぼちゃワイン』のエンディング曲で自ら歌唱した「青葉春助 ザ・根性」を、カラオケで必ず歌う歌です、とTweetし、伊藤さんを偲ばれた。
伊藤さんの最高傑作は『水戸黄門』をモチーフにしたアニメ主題歌!?
筆者的には『ダイオージャ』の主題歌「最強ロボ ダイオージャ」が伊藤さんの最高傑作と信じられてならない。こちらはかの有名時代劇『水戸黄門』(’69年)モチーフのロボットアニメというか翻案というかだが、「悪に染まりし者どもよ 今こそその眼でしかと見よ こちらにおわすお方こそ おそれおおくもミト王子 さがれ! さがれ! さがれ! さがりおろう! カモン! カモン! カモン! ダイオージャ!」という詞がスラスラ脳裏に浮かび、こうしてソラで書けてしまう。何より作品の基本設定がこれで分かってしまうスグレモノ。伊藤さんはやはり天才だと、今この詞を書いていて実感した次第。
数多くのタッグを組んだ亜星さんによれば、伊藤さんはお酒も呑まない、大変真面目な方だったとのことだが、その生真面目さこそが生み出し得た名フレーズの数々なのだろう。伊藤先生、いつまでも忘れ得ぬ名曲の数々をありがとうございました。