1ページ目から読む
3/4ページ目

 しかしこの年の秋になって、アスタリスクのプレゼンは不採用となる。

「なんでやろ、という思いはありました。でも、その時点でファーストリテイリングさんへの不信感はなかった。不信感が湧いてきたのは翌年(2019年)に入ってからのこと。この年の1月15日に当社のセルフレジの技術の特許が認められ、そのことはファーストリテイリングさんの担当者にも伝えたのですが、その翌月からユニクロでウチが開発した技術を無断で使ったセルフレジの導入が始まったんです」

「たいしたことない弁理士」と言われ…

 これを知ったアスタリスクはファーストリテイリングに話し合いを要請すると、ファーストリテイリングから呼びつけられる形で、月に一度のペースでその場が持たれるようになった。

ADVERTISEMENT

「それまでの話し相手はIT担当の人たちで、友好的な対応でした。ところがこの時期から知的財産部門の担当者もあらわれて、だいぶ雰囲気が変わってきました。知財部門の担当者との最初の話し合いで、彼らは『ゼロ円ならライセンス契約を結びます』という、信じられない提案を突きつけてきたのです」

 人の作った技術を使いながらカネは払わない――という、にわかには信じられない発言に、鈴木氏は唖然とした。

 

「中小企業である私たちにとっては、いつでもお前らを潰すことができるんだから、おとなしく手を引け、と言われたも同然です。もちろんそんな話を飲むわけにはいきません。向こうの知財担当者が、こちらを小馬鹿にした態度だったことも疑問でした。当社の顧問弁理士に対しても『たいしたことない弁理士』だと言われました。当社の弁理士には、休日対応にも応じてもらい、真剣に特許を記載してきた経緯もあります。人生をかけてやっている苦労を真っ向から否定された気持ちでした。平行線のまま、話し合いを繰り返すだけの状態が続きました」