いま、京都の中心地にある名門女子校が揺れている。舞台となっているのは幼稚園から短大・大学までを擁するキリスト教主義の平安女学院(以下・平女)だ。きっかけになったのは今年3月1日、平女の高等学校の卒業式で山岡景一郎理事長(学院長・大学学長も兼任/91)が語った式辞だった(#1で詳報)。
この式辞が146年の歴史を紡いできたキリスト教系の名門女子校では大問題に発展した。同学院の現役教職員が語る。
「理事長は平女を“エルメスやヴィトンと同じようなブランド大学”と表現しました。しかし、これは言い換えれば他の学校は、平女より品格が劣るということを言っていると同義であり、謙虚さを重んじてきた平女146年の歴史とは相いれません。
不適切発言で保護者やOGから批判が殺到
また、式辞のなかで人間は社会の役に立つか立たないかによって、5種類に分けられ、《世の中におったら害になる人》もいると指摘するなどの差別発言もしています。人間の存在そのものを赦し、肯定するキリスト教主義の平女において、不適切にもほどがある発言でした。保護者やOGからも批判が殺到しました」
そこで同学院の今井校長が中心となり、理事会で理事長に式辞内容についての説明を求めようとする動きが加速した。しかし理事長側がその動きに勘付き、今井校長を自宅待機処分としたのだ。
「理事長は松下幸之助に私淑する“敏腕経営者”です。教育よりも学院経営を重視するため、これまでも教職員や生徒らと対立してきました。平女の教職員は俗世間とは隔絶されたような雰囲気がある方も多いので、経営者然とした理事長とは水と油。過去には、理事長と現場で訴訟沙汰にまで発展したこともあります」(地元紙記者)
(全2回の2回目/1回目を読む)
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「6月16日、理事長の責任を追及していた校長に自宅待機処分が下され、校長は生徒や教職員との接触を禁じられました。校長や教職員は以前、理事長から『学校の中には私の協力者がいるから』と聞かされたことがあるそうです。自分たちの中に内通者がいるのではないかという恐怖から、教職員らは互いに疑心暗鬼になり、相談し合うこともできない、異常な緊張状態に陥りました」(前出・現役教職員)