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 開会式より前、天皇は皇居宮殿において、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長らIOC関係者や開会式に参加するために来日した各国首脳らと面会、言葉を交わした。前回の1964年の東京オリンピック時には天皇・皇后がIOC関係者や各国首脳を皇居宮殿に招いて茶会や昼食会が開催されたが、今回は新型コロナウイルスの感染防止のために出席者も絞られ、飲食もなく、短時間の面会となった。その意味では、新型コロナウイルスの状況で飲み会や会食を控えることを余儀なくされている国民を意識したのかもしれない。一方で、まったくそれを執り行わなければ、国際儀礼上の問題ともなろう。そのため、両方に配慮する形で実施されたのではないか。

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雅子さまの「不在」をどう解釈すればよいか

 この面会には、皇后は出席していない。それは、各国首脳が配偶者などの同伴を見送ったため、それにあわせて天皇に同席しなかったと言われる。一方で、客側が一人であったとしても、招くホスト側は夫婦同伴であっても国際儀礼上問題ないという意見もある。しかし今回、あえて皇后は出席しなかった。そして、開会式も天皇一人で出席した。それをどう解釈すればよいのだろうか。現在の社会状況が続くなかで、皇后の体調が思わしくない可能性もある。また、日本赤十字社の名誉総裁を務める皇后は、新型コロナウイルスの再びの蔓延という状況から、医療機関などに配慮したという可能性もあるだろう。そもそも宮内庁は、天皇の1回目のワクチン接種については公表しているが、皇后についてはそれすら発表していない。国民の接種状況を意識して、まだなされていない可能性もある。そうすれば、公の場面に出てくることはリスクをかなり伴うことになる。

7月3日、第35回国民文化祭・みやざき2020、第20回全国障害者芸術・文化祭みやざき大会開会式をご覧になった天皇皇后両陛下 宮内庁提供

 オリンピックについては天皇の開会式出席を最後に、天皇も皇后も、そしてその他の皇族も競技を観戦することはない。これは無観客となったことに配慮し、テレビでしか観戦することができない国民と同じ立場に立とうとする姿勢だろうか。一方で、天皇が一人、IOC関係者や各国首脳と面会し、開会式に出席して開会宣言を述べたのは、最低限でも国際儀礼を果たそうとしたと見ることができるだろう。今回の対応からは、国民を意識する姿勢とともに、それを配慮しつつ国際儀礼をも果たそうとする令和の皇室の姿が見えてくる。