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金儲け主義でありながら、平和を公言するIOCの偽善

 そして、こうした広島とIOCの“連帯”の取り組みに対して、今回のバッハ氏の広島訪問を批判する声が大きくなったのは、

《原爆慰霊碑が外部の人間によって政治的に利用されることへの広島の深い嫌悪感を反映しており(中略)金儲け主義でありながら、平和を公言するIOCの偽善的な側面が明らかになったことが、人々の心を揺さぶったからなのではないか》

 と指摘する有識者の声を紹介した。

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開会式で聖火を点火した大坂なおみ選手 ©JMPA

 5月26日に公開されたオーストラリアの「The Conversation」の記事では、そもそも「オリンピック開催」自体が、近年ホスト国の国民の間で不人気になっていると述べている。

The Conversation紙HPより

《リオ五輪も東京五輪も、開催数年前は国民は大会に期待していたものの、開催日が近づくにつれ、様々な問題が露呈し、国民の期待は失われていった。東京五輪は当初、市民を巻き込む工夫を重ね、日本の復興の象徴として位置づけられたものの、官僚主義やコスト超過問題、労働力不足を経て、国民の間の期待感は薄れていった。リオ五輪の場合は汚職や施設の建設の中止などを経て、すべての国民のための大会を作り上げることに失敗した。リオ大会に対する人々の関心を調査するため、2100万件の関連ツイートを分析したところ、大会そのものへの人気はあったものの、世間の人々の多くが、IOCは開催都市を支援することに関心がなく利己的な存在だと考えていることが判明した》

《今回の東京大会の規模は縮小されることが予想されるものの、放送料収入は十分に得られる。しかし、その大部分はIOCに流れる予定だ。ある試算によると、日本は230億ドルもの損失を被る可能性があるという。開催都市は、チケットの売り上げだけでなく、観客がホテルやレストラン、都市や国内旅行に費やす費用から最も利益を得てきたからだ》

「復興の象徴」という「本来の目的」が忘れられている

 6月24日の米「Los Angeles Times」の記事が指摘したのは、東日本大震災及び原発事故からの「復興の象徴」として位置づけられていたはずの東京オリンピックの「本来の目的」が忘れられているかのような現状だ。同紙は福島県南相馬市の現状をルポした。

「Los Angeles Times」公式HPより

《福島が安全な場所だと世界中にアピールするためには、福島第一原子力発電所から20マイル(約33キロ)圏内に位置し、2019年に再開した日本でも有数の波がたつ北泉海岸をサーフィンの競技場にするのが一番だろう。しかし、大会のサーフィンの会場に選定されたのは千葉県にある釣ヶ崎海岸であり、コロナ禍の様々な規制のため、南相馬市が文化交流イベントとして受け入れる予定だったアメリカのサーフィンチームが訪れることができるかどうかは不明だ。同市内では東京オリンピックの看板よりも7月に開催される地元の「相馬野馬追」のポスターの方が多く確認できた》