8月8日に閉幕する東京オリンピック。金メダルラッシュに日本中が沸いたが、緊急事態宣言下の東京で、連日のようにコロナ陽性患者が増えていく中での開催だったことに加え、小山田圭吾氏の「いじめ問題」や小林賢太郎氏の「ホロコースト問題」などにより7月23日に行われた開会式の演出チームのメンバーが相次いで辞任するなどしたため、国内ではギリギリまで「開催の是非」を問う声がやまなかった。英語圏のメディアもまた、日本のこうした「五輪を巡るドタバタ劇」について厳しい視点で報じた。

開会式 @JMPA

40億ドルの放映権料を必死に徴収することがIOCの目的!?

 まず、米「The Washington Post」が痛烈に批判したのは、責任逃れにいそしむIOCの態度だ。7月8日の記事では、IOCはこれまで「大会は絶対に安全に開催される」と何度も強調してきた一方で、アスリートには「私は、コロナや猛暑などの健康被害によるパフォーマンスへの影響、重篤な身体的障害、さらには死を含め、自分自身のリスクと責任で大会に参加することに同意する」という内容の “免責書”にサインすることを求めていた事実を明らかにした。そのうえで同紙は、

《(大会は「安全だ」というIOCの言葉の裏に潜む)本当の目的は、(コロナによる)リスクを控えめに見積もり、大会が完全に安全であるとキャンペーンし、収入源である40億ドルの放映権料を必死に徴収することだ。火事が起こったところで、ガソリンを被っているのは他の誰かで、(責任逃れに忙しい)IOCの役員は完全に安全なのだ》

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 と述べ、アスリートに健康上のリスクの全てを負わせたうえに「金儲け」にひた走るIOCの欺瞞を暴いている。

 また、同紙は7月16日の記事でIOCバッハ会長の広島訪問について触れた。バッハ会長が原爆死没者慰霊碑に献花した平和記念公園の外では、《オリンピックの中止を求めバッハ氏に「帰れ」と叫ぶデモ隊と警察の姿が確認され》、《被爆者や市民団体などが同氏の広島訪問に強く反発している》と伝えた。また、

《バッハ氏が「核兵器のない平和な世界」のイメージを利用し、コロナ禍で力ずくでのオリンピック開催を正当化することは、被爆者に対する冒涜である》

《コロナ禍で人命が失われているときにオリンピックを開催することは、「平和の祭典」であるはずの大会の精神に反する》

 といった日本国内の声があることを伝えた。

バッハ会長の広島訪問を伝えるワシントンポスト紙(公式HPより) 

 一方で、核兵器のない平和な世界を目指す広島の運動と連帯しようとするIOCの試みは、歴史的に物議を醸してきたわけではないとも同紙は説明する。前回(1964年)の東京オリンピックでは、原爆が投下された日に広島県で生まれた坂井義則氏(19歳)が国立競技場に設置された聖火台に点火した事実に触れた。また、1994年、サマランチIOC会長(当時)は広島平和記念資料館を訪れ、「広島が『平和の都市』であると同時に、オリンピック・ムーブメントは世界に平和をもたらすものだ」とゲストブックに記したとも伝えた。