政治に限らず、組織で方針を定める上役・上司と、現場を担っている部下・管理職の間で、緊張関係を持つのは当然です。「お前、ここまでやれや」「いや大将、さすがにそれは無理でやんすよ」という掛け合いは、それこそ日本国中だけでなく海外も合わせれば100兆回も繰り返されてきた組織の摂理でもあります。
しかしながら、結果を出せる上司とそうでない上司、現場からの信任の篤い上司と現場から馬鹿にされる上司というのは、まさにこのような緊張する議題を進めなければならないときに、部下にかける言葉の選び方ばかりか声のトーンまですべてが影響すると言っても過言ではありません。
納得できる意見を部下が言わなきゃ気が済まない
平成最大の厄災であった東日本大震災とそれにともなう福島第一原発事故では、活動家から声望を集めて総理大臣にまで立身出世した菅直人さんが原発事故対応の「陣頭指揮」を取るにあたり、かねて欠点とされた「イラ菅」とも呼ばれる狭量な態度が爆発しました。「俺は原発には詳しいんだ」などの歴史に残る名言を部下に浴びせながら現場に介入、結果としてやらんでもいいことをたくさんやって足を引っ張り大混乱に陥って、原発事故の被害を軽減させられる機会を何度も逃したとされ、パワハラの帰結としては悲しすぎる事実を残しました。
危機に際して、また、自分の意に添わない悪い状況や提案に対して、どのような態度で接することが求められているのかという間合いが分からないと、権力者から部下や現場の心は離れていってしまいます。一見して外ヅラが良く、ネットでは話の分かりそうな態度を取っていても、思い通りにならない現実に直面した際に自分の考えや理想を声高に強弁し、部下に強要して納得できる意見を言わせないと気が済まないというのがパワハラ民の本性です。現実を受け入れる理性よりも、その場で怒鳴り散らし相手をねじ伏せる感情のほうがはるかに勝ってしまうのです。
部下に「脅しておいて」と命じるデジタル改革担当大臣
同じく週刊文春が、先日9月1日に発足したデジタル庁の平井卓也さんについての実名告発の記事を掲載していました。6月には五輪アプリの発注などをめぐって、平井卓也さんが部下に対してNECを「徹底的に干す」「脅しておいて」などの発言を行ったとして騒ぎを起こしています(朝日新聞報道)。
常識的に考えて、部下に出入り業者を脅しておけと要求していること自体がおかしいうえに、IT政務官時代に長い付き合いがあったとされる豆蔵ホールディングスの株式を取得、その後、MBO(マネジメント・バイアウト=経営陣による自社株式の買い取り)で少なくとも1,200万円の利益を平井卓也さんは得ていたにもかかわらず、これが資産等報告書に未記載とかいう事例もありました。
五輪アプリ開発責任者が実名告白 平井デジタル庁はもう既に壊れている
https://bunshun.jp/denshiban/articles/b1590