「保護者に髪を切ることの当否を確認することが子ども本人の利益になる」
山梨県山梨市の中学校で2016年6月、女子生徒(当時中学2年生)が「臭い」と言われるなどのいじめ被害をアンケートに書いた際、養護教諭は「髪が長い」ことが理由だとして、学年主任が校舎内の廊下で女子生徒の髪を切った。これにより精神的苦痛を負ったなどとして女子生徒側が山梨市を訴えていた裁判で、甲府地裁(鈴木順子裁判長)は、学年主任が女子生徒の髪を切ったことの違法性を認め、原告に対して11万円を支払うよう命じる判決を下した。原告は判決に欠席したものの、原告の両親はほっとして、支援者と握手を交わしていた。
他の生徒から見られる廊下で行われ
判決によると、2016年6月8日、学年主任が原告の女子生徒の同意を得て、髪を切ったと認定されている。原告側は「同意をしていない」と主張してきたが、その点は認められなかった。しかし、髪を切るという「ヘアカット行為」について、女子中学生にとって、髪は容姿や個性にかかわる重大な関心ごとであり、一旦切った髪の毛はもとに戻らない不可逆をともなう、とした。
その上で、今回の髪を切る行為は、他の生徒から見られる廊下で行われ、髪を切る際に、底に穴を空けたポリ袋を被せられた。このことは自尊心を傷つけられる可能性があり、しかも、鏡のない場所で、工作用のハサミでなされたことは、態様や方法が不適切であった、としている。
また、当時原告は14歳の中学生で、一般的に教師に逆らえない立場であり、女子生徒の発達特性があるため、正確に意思を伝えられない可能性があることを考慮すれば、学年主任が母親に髪を切る当否を確認すべきだった。確認することで母親が判断を与えられる利益は、原告にとっても法的な利益というべき。学年主任はその義務を怠ったなどとして、職務上の法的義務に違反する、とした。