1ページ目から読む
4/4ページ目

 放射状のメイン通りと円弧状の路地を少しうろうろする。おなじみのファーストフードのチェーン店からデートにも使えそうな(慶應の学生が大学のすぐ目の前でデートをするとは思えないんですけどね)ちょっとしゃれたふうの飲食店、知る人ぞ知る空気を醸す個人経営の店、男子大学生が男子大学生を貫くには欠かせない濃厚大食い系の飲食店、ほかに古本屋に雑貨店、美容院などが駅の近いところに所狭しと建ち並んでいる。例のゲームセンターもそうだし、雀荘のようなものもある。

 このように、あらゆるものが狭いところにひしめくのは学生街ならではの特徴といっていい。学生たちが日常を過ごす学生街には、世の中の繁華街にあろうもののほとんどが必要充分な範囲で揃っている。

 多過ぎもなく、あれがないということもなく、何かにどっぷりとハマって沼におちるほどの深みもなく、まさに絶妙なあんばいだ。(基本的には)数年間という限られた期間を過ごす町として、改めて歩いてみると実に良くできているのだと思う。

ADVERTISEMENT

 

 まあ、実際には本格的に遊ぼうと思えば渋谷や横浜に電車で一本なのだからどうということはないのだが、学生に対しててきとうにいろんなものを与えてくれるというのが学生街なのだろう。

「学生街」だけじゃない「日吉のもうひとつの顔」

 が、そんな町の中を歩いている人は学生たちに限らない。駅から少し離れれば、もう日吉はほとんど住宅街になっている。

 

 放射状のメイン通りを少しずつ進んでいくと、駅から離れてゆくにつれて少しずつ飲食店などが減っていく。そして入れ替わるように住宅が増えてゆく。独特な構造をしているおかげで、グラデーションのように町の雰囲気が変わってゆくのを実感できるのだ。日吉台の東の突端にある慶應の門前町、学生街という日吉駅の特徴は、そうして西に向かって歩くにつれて少しずつ違う顔を見せてくる。

 だいぶ西に行けば田園地帯があって、さらにその向こうには高台の上のニュータウン。さすがにそこまでいくと日吉駅の圏内とはいえないが、いずれにしても日吉駅はそうした高台と低地が入り組んだ中に住宅地が広がるという、“横浜らしさ”を教えてくれる入口の駅でもあるのかもしれない。

写真=鼠入昌史

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。