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3月9日、東スポ紙面に異常あり

 潮目が変わってきたのはこの翌々日あたり。まず一般紙の一面を確認しよう。

 3月9日(水)

 朝日『ロシア 国境の全軍投入』

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 読売『露、再び「人道回廊」宣言』

 毎日『人道回廊開設 避難始まる 仏独中首脳は会談』

 依然として深刻な記事で埋められている。これが現実だ。この日のタブロイド紙はそんな気分を拡大し、

『プーチン逆上 皆殺し危機』(夕刊フジ)

『ロシア発 金融パニック』(日刊ゲンダイ)

 と煽る。そして東スポは、

『プーチンの核ボタン強奪へ』

 東スポもプーチンを一面に持って来た。ここから一気に変わった。翌日は、

『プーチン愛人とぎっくり腰』(3月10日)

©プチ鹿島

 プーチンネタでもどこかまだ可笑しい。説明すると、この頃はプーチン大統領の精神面の変化についての報道が世界で相次いでいた。そんななか東スポは「ぎっくり腰が原因か!?」ときたのだ。

大胆すぎる“見立て”で勝負

「ハンググライダーに乗った時に腰をやった」「元体操選手の若い愛人とハッスルしすぎたのもあるかもしれません」という軍事ジャーナリストのコメントをもとに「痛み止めを乱用レベルまで使いすぎると、依存症など精神に影響をきたすこともある」という見立ての東スポ。

 夕方に出る新聞は朝刊と切り口が同じだと誰も話題にしてくれない。「プーチンの精神面の変化」というお題がトレンドになると東スポは「愛人とぎっくり腰が原因」と勝負してきたのである。これもまた新聞のつくり方、読み方である。

 そのあとは『プーチン暗殺へ 元スゴ腕スナイパー潜入か』(3月11日)、『プーチン 4・3生死Xデー』(3月14日)とおどろおどろしい路線へ。