7月7日、東京・歌舞伎町で精神科クリニック「東京クリニック」の院長をしていた伊沢純被告(51)がまた逮捕されたと発表された。2022年3月に逮捕されてから、これで6回目の逮捕となった。
「今回は、クリニック内で都内の住む女性にわいせつな行為をしたとみられています。強制性交の疑いがかかっていますが、本人は『無理やりではない』と容疑を否認しています」(社会部記者)
文春オンラインは、これまでにも伊沢被告の犯罪行為についてたびたび報じてきた。当時の記事を再公開する(初出2022年5月2日、肩書き、年齢等は当時のまま)。
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「分量や組み合わせが不可解な処方。たとえば他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作にのみ適応が認められている薬(トピラマート)が処方されていますが、てんかん患者に対してベタナミンは禁忌です。しかもベタナミンの処方量は保険診療で定められた上限より多い。
ベタナミンは伊沢容疑者が大量に処方して問題になった『合法覚醒剤』と呼ばれたリタリンの処方制限の後、同種の薬として人気があります。ただ、ヒステリー状態にある患者には禁忌とされていて、使い方によっては精神状態が悪化することもあります。重篤な肝障害を引き起こす可能性もあるので、定期的な検査を行う必要があります」
精神科医の不正を告発する活動を続け「ブラック精神医療」(扶桑社新書)などの著書もある米田倫康氏は、A子さんのお薬手帳を見て、そう見解を述べた。
3月28日、歌舞伎町にある「東京クリニック」院長の伊沢純容疑者(51)が、患者で交際相手だったA子さんへの暴行によって逮捕された。伊沢容疑者は、同月に覚醒剤取締法違反(所持)、4月には別の女性患者に対する準強制わいせつ容疑でも逮捕されており、次々に余罪が明らかになっている。
「患者を殴った」「無資格スタッフに薬を処方させた」
伊沢容疑者の逮捕時、その前科にも注目があつまった。
2007年以降、診察室で女性患者を殴った傷害罪と、無資格のスタッフに薬を処方させていた医師法違反罪で有罪が確定。さらに2008年11月には元患者で交際していたとみられる女性に対するストーカー規制法違反と脅迫の疑いでも逮捕されていたのだ。
伊沢容疑者の新たな被害者となったのがA子さんだ。もともと准看護師として働いていたがトラブルがあって辞め、自宅療養をしていた。昨年3月に「昼夜逆転してしまった生活リズムを整えるため」に睡眠薬を処方してもらおうとクリニックを訪れたことで伊沢容疑者と知り合い、交際に発展、同棲するに至ったのだ。
しかし同棲生活は地獄そのものだった。A子さんは「#1」「#2」「#3」で伊沢容疑者との壮絶な日々について明かしているが、なかでも“薬漬け洗脳”は、いまだにA子さんの心身を蝕んでいる。
「最強の睡眠薬」「飲む拘束衣」よりも強力な成分を処方
冒頭で米田氏が「不可解な処方」と指摘したA子さんのお薬手帳を見ると、大量の薬が処方されていることがわかる。例えば、昨年6月27日には一度に31種類もの薬が処方されている。ビタミン剤も多いが、一度の処方で2ページが埋まるほどの処方は尋常ではない。
「交際を始める少し前から伊沢先生が処方する精神薬や向精神薬の量が増えていきました。『すっきり眠れるから』『A子ちゃんは従順になるようにもっと飲まなきゃ』と、ことあるごとに薬を処方されました。別の医者に『薬を減らすように』と手紙を書いてもらったこともありますが、さらに処方量を増やされました。
伊沢先生が複数の薬を組み合わせて一つの小袋にまとめた『伊沢スペシャル』も処方されました。クエチアピン200mg、コントミン100mg、フェノバール60mg、ピレチア25mgを混ぜたものです」
ある医療関係者によると、この組み合わせは「最強の睡眠薬」「飲む拘束衣」と言われたべゲタミンを強力にした成分になるという。ベゲタミンは作用が強すぎることや、依存性の高さなどから2016年に販売が中止された。