報道エリアでは美男美女がズラリと並べられ
日本人信者に高額献金が求められる背景には、統一教会における特殊な位置付けがある。「韓国はアダム国家、日本はエバ国家」とされ、エバはアダムに奉仕しなければならないと教え込まれているのだ。こうした韓国を優越的地位に見る教義によって、犠牲になってきた日本人妻も少なくない。冠木氏が続ける。
「私もその1人でした。21歳で結婚した1人目の夫との間には子供ができましたが、夫は日本人女性と結婚して日本の永住権を取ることが目的で、敬虔な信者ではなかった。暴力も振るわれ、1年あまりで離婚しました。2人目の夫は、事前に聞いていた学歴と職歴、年齢の全てが嘘だった。中卒の日雇い労働者だった夫は借金を重ね、子供が生まれた2週間後に失踪しました。誰も知らない外国で夫に捨てられたのです」
実際、合同結婚式を巡っては90年代以降、頻繁に婚姻の無効を求める訴訟が提起されている。91年7月には、都内在住の女性が結婚の意思がないにもかかわらず、婚姻届けを出させられたとして夫を相手取った裁判を起こし、勝訴。96年には最高裁で確定した。99年には、多田氏も元信者の女性2人と共に宗教選択や婚姻の自由を侵害されたとして、統一教会を相手に損害賠償訴訟を起こしている。
多田氏が証言する。
「04年に最高裁で勝訴が確定し、『文鮮明氏の選んだ相手を断れず、婚姻の自由を侵害する』とした合同結婚式への参加強要の違法性が認められました。それまで『何となくおかしい』と言われていた合同結婚式ですが、訴訟を通じて、参加強要の違法性も明らかになったのです」
だが以降も合同結婚式は行われてきた。92年の式では桜田らを広告塔として教勢の拡大を図ったが、近年は一般人でもその役割が求められている。14年の合同結婚式を取材した記者が明かす。
「報道エリアの前には、わざとらしく美男美女がズラリと並べられて、教団職員らが『どうぞ撮ってください!』と言っていた。異様な光景でした」
合同結婚式には「性とカネ」が付きまとう
合同結婚式は今年4月にも、韓国の教団施設で開催されている。全世界で2100組が出席し、日本からも都内のホテルから中継で約100組の新郎新婦が参加。亡き文鮮明氏に代わり、妻の韓鶴子総裁が聖水式などを執り行っていた。
統一教会に事実関係の確認を求めると、主に以下のように回答した。
「(「三日儀式」などの)各種儀式は、教義に基づいた神聖な宗教儀式であり、現在も行われています。
(最高裁判決について)祝福結婚式が『婚姻の自由を侵害し違法』であるとは考えていません。各判決は結婚の手続きをした後、両親や親族らから拉致監禁される中で信仰を破壊され、自らの意思で望んで受けた祝福も『受けさせられた』と主張することで婚姻無効が認められたものが大半です」
教団は世界平和統一家庭連合と名を変えたが、今でも合同結婚式には「性とカネ」が付き纏っている。