1992年8月、ソウルオリンピックスタジアムで統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の「合同結婚式」が開かれた。純白のドレスに身を包んだのは、人気絶頂だった歌手の桜田淳子(当時34)、ロス五輪代表で“新体操の女王”と呼ばれた山﨑浩子氏(同32)、バドミントン元日本王者の徳田敦子氏(同36)。桜田は結婚前の会見でこう語っていた。
「見ず知らずの相手といっても、価値観が一緒で人生の目的、方向性が同じ人が集まるのだから、不安はありません。教会の教えは愛と性を大切にする。正しい家庭生活をスタートする上での厳粛な儀式と考えています。抵抗はありません」
果たして、「愛と性を大切にする」という合同結婚式の実態とは――。
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顔写真と全身写真を元に結婚相手の“マッチング”
元信者で、自身も1995年、2002年の二度合同結婚式に参加した冠木結心(かぶらぎけいこ)氏が言う。
「まず、結婚式に先立って行われるのが『21日修練会』です。私も式の半年前に千葉の教会施設で参加しました。全国から老若男女が集まり、21日間にわたり、教団の経典『原理講論』を朝から晩まで叩きこまれる。いかに人間は堕落しており、だからこそ、祝福婚をしなければならないのかを教え込まれるのです」
修練会が終わると、信者たちは所属する地元の教会に戻り、合同結婚式への参加を表明する。
「『国籍や学歴を問わず、どんな相手でも受け入れる』と誓いを立てるのです。その後、町の写真館に行って顔写真と全身写真を撮影しました」(同前)
この写真を元にして結婚相手の“マッチング”が行われるのだ。冠木氏の場合は、「教祖の文鮮明氏が七代前までの先祖の因縁を霊視して決めた」という。実際、教団は当時、女性信者のバーコード付き顔写真を持った文鮮明氏が、壁にズラリと並んだ男性の顔写真を見ながら、結婚相手を選ぶ様子を公開している。
発表された結婚相手に「あぁ……」と落胆する人も
元信者で、92年の合同結婚式に参加したジャーナリストの多田文明氏によれば、結婚相手が発表される瞬間は悲喜交々(こもごも)だという。
「他の信者と共に、アベル(指導役の信者)に呼び出され、『結婚相手が決まりました』と写真を渡されました。本来、メシア(救世主)である文鮮明氏が決めた相手に対し、異を唱えることはサタン(悪魔)の心を持つことを意味する。とはいえ、皆、好みがありますから、『あぁ……』と落胆している人もいました」
それでもマッチングを受け入れた信者は結婚式直前に渡韓。多田氏の場合、航空券やホテルの予約は全て教団が行ったという。