裁判で顧問が体罰をしていたシーンの映像が公開され…
当時の桜宮は大阪を代表するスポーツ強豪校の1つで、バスケ部以外でも体罰が常態化していて、被害者や第三者が、学校に通報しても黙殺されていた。
「臭いものには蓋をする」という学校側の隠蔽体質が明らかになったのち、当時、大阪市長だった橋下徹氏が、12年度の桜宮の入試で体育科とスポーツ健康科学科の2科の募集を中止させるという強硬手段に出て、賛否両論の意見が噴出するも、13年にこの顧問の懲戒免職処分が決定。
その後、裁判でこの顧問が体罰をしていたシーンの映像が公開されたのだが、顧問が自殺したキャプテンを平手で殴り、さらに体育館の壁に追い詰め、逃げられないようにして20発ほど殴り続けている場面もあった。その間、およそ30秒ほど。もはや指導と呼べるものではなく、傷害や暴行の罪に問われるに十分すぎるほどの内容だった。
裁判が進むとこの顧問は教師になってから24年間、ずっと体罰指導を続けていたことが明らかになった。バスケ部員以外にも体罰を行い、学校から指導されると、今度はバスケ部員に限定して体罰を続けるなど、とんでもない事実も明るみに出た。
結果、この顧問は傷害と暴行の罪で懲役1年、執行猶予3年の有罪判決に加え、大阪地裁より4361万円の支払いを命じる判決が下った。この事件は当時、ワイドショーで社会問題として連日のように取り上げられた。
求められる指導者たちの「意識改革」
小倉は当時この事件の報道をつぶさに追い、「他人事ではない」との思いを強くしたのだという。
「今は『昔はこうだった。だから君たちも同じように指導するからな』ということが許される時代ではないんですね。一口に『厳しく指導する』と言っても体罰は絶対ダメですし、あからさまな暴言を吐くなんてもっての外です。今の時代の指導者は、悪しき前例となる指導方針を捨てて、子どもたちに理解してもらえる指導方法にシフトチェンジしていかなければ、部活動そのものの存続だって危ぶまれる」
競技こそ違えど、桜宮高バスケットボール部で起きた事件は小倉にそのことを改めて強く認識させた。
高校野球界に限らず、学生スポーツの現場における長年にわたってはびこる暴力や暴言などの問題を今の指導者たちは断ち切ることはできるだろうか。それには何より指導者たちの「意識改革」が必要なのだと、小倉たちの話を聞いて、私は強く思う。