「Google Earthを使えば、土地の標高や、建物の高さといったデータも手に入ります。それをパソコンでCADのデータ(3次元化された図面)に起こして、設計図を書くところから始めています。そもそも、どの町を作るかという時点で、Googleのストリートビューを見て決めていますね」
造形のリアルさとは裏腹に、実地への取材はほとんどせず、Googleから入手できる客観的なデータから作り上げるというMAJIRI氏。製作者の主観が入り込む余地がないからこそ、作品を見る側が、その町についてのことを、めいめい勝手な言葉で語りたくなる。この“語りたくなる”魅力が、SNSで支持を集める大きな理由だろう。
また、YouTubeにアップロードされている製作工程の動画を見ると、勘に頼るフリーハンドの作業がほとんどないのがわかる。この背景には、さまざまな役割を持つ立方体を組み合わせ、思い思いのものを作り出す“あのゲーム”の影響があるという。
「小さい頃から『マインクラフト』をPCで遊んでいました。ブロックを並べて、建物や道路をリアルに作るのが楽しかったですね。あとは街作りゲームの『Cities: Skylines』にも夢中になって、受験勉強そっちのけで遊んでいました(笑)。現在のジオラマ作りにも影響はあると思います」
デジタルの発想をアナログに持ち込むのは“逆輸入”にも思えるが、『マインクラフト』を遊んで育った世代にとっては、極めて自然なことなのかもしれない。『マインクラフト』は、平成時代を代表する重要なゲームタイトルのひとつなのだとあらためて感じた。
そもそも、どうしてこんなに精巧なジオラマを…?
2020年以来、模型作りが隠れたトレンドになっている。コロナ禍で外出自粛が叫ばれるなか、“おうち時間”をつぎ込むのに勝手がいいからだが、MAJIRI氏がプロモデラーとしてデビューした陰にも、新型コロナの影響があった。
「大学でソーラーカーを作るサークルに入っていたんですが、コロナの影響で集まれなくなって、全然作業ができなくなりました。それまで打ち込んでいたものがなくなっちゃって。その代わりに、ひとりでもできるジオラマ作りを始めてみたんです」
小学生の頃に地元の景色をジオラマ化した経験こそあれ、当時は他のモデラーとの交流も乏しく、プラモデルに至っては“挫折”するほどだったという。