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《写真多数》精巧すぎるナゾの「150分の1スケール渋谷」…異常なクオリティのジオラマが“意外と普通のPCとプリンタ”から生み出される秘密

《写真多数》精巧すぎるナゾの「150分の1スケール渋谷」…異常なクオリティのジオラマが“意外と普通のPCとプリンタ”から生み出される秘密

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「Google Earthを使えば、土地の標高や、建物の高さといったデータも手に入ります。それをパソコンでCADのデータ(3次元化された図面)に起こして、設計図を書くところから始めています。そもそも、どの町を作るかという時点で、Googleのストリートビューを見て決めていますね」

複雑な構造がマニア心をくすぐる箱崎ジャンクションを忠実にジオラマ化

 造形のリアルさとは裏腹に、実地への取材はほとんどせず、Googleから入手できる客観的なデータから作り上げるというMAJIRI氏。製作者の主観が入り込む余地がないからこそ、作品を見る側が、その町についてのことを、めいめい勝手な言葉で語りたくなる。この“語りたくなる”魅力が、SNSで支持を集める大きな理由だろう。

 また、YouTubeにアップロードされている製作工程の動画を見ると、勘に頼るフリーハンドの作業がほとんどないのがわかる。この背景には、さまざまな役割を持つ立方体を組み合わせ、思い思いのものを作り出す“あのゲーム”の影響があるという。

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「小さい頃から『マインクラフト』をPCで遊んでいました。ブロックを並べて、建物や道路をリアルに作るのが楽しかったですね。あとは街作りゲームの『Cities: Skylines』にも夢中になって、受験勉強そっちのけで遊んでいました(笑)。現在のジオラマ作りにも影響はあると思います」

御茶ノ水駅と複々線の線路。町を支える巨大な擁壁が見どころ

 デジタルの発想をアナログに持ち込むのは“逆輸入”にも思えるが、『マインクラフト』を遊んで育った世代にとっては、極めて自然なことなのかもしれない。『マインクラフト』は、平成時代を代表する重要なゲームタイトルのひとつなのだとあらためて感じた。

そもそも、どうしてこんなに精巧なジオラマを…? 

 2020年以来、模型作りが隠れたトレンドになっている。コロナ禍で外出自粛が叫ばれるなか、“おうち時間”をつぎ込むのに勝手がいいからだが、MAJIRI氏がプロモデラーとしてデビューした陰にも、新型コロナの影響があった。

「大学でソーラーカーを作るサークルに入っていたんですが、コロナの影響で集まれなくなって、全然作業ができなくなりました。それまで打ち込んでいたものがなくなっちゃって。その代わりに、ひとりでもできるジオラマ作りを始めてみたんです」

生まれて初めて作ったジオラマは、JR関西本線が走る地元の田園風景だったという

 小学生の頃に地元の景色をジオラマ化した経験こそあれ、当時は他のモデラーとの交流も乏しく、プラモデルに至っては“挫折”するほどだったという。