「プラモデルって、組み立てる順序が決まっているのがつらいんですよね。それよりも、一から自分で作れる都市ジオラマのほうが、喜びが大きかったです」
大学で建築を学んだこともジオラマ製作の助けになったという。卒業後は東京のミニチュア・テーマパークに就職するも、プライベートで始めたジオラマ製作のYouTubeが話題になり、帰郷し独立。現在ではプロモデラーとして活動するかたわら、自ら設計し3Dプリンタで出力したパーツの販売も手掛けている。
「この室外機のほか、ゴミ袋や酒瓶のケースといった、超小型でマニアックな部品を扱っています。大手メーカーからは出ないタイプの製品だからか、これが意外と買ってもらえるんですよ(笑)」
パソコン、プリンタ…“意外と普通”な機材でなぜここまでの作品が出来るのか
ソーラーカーの部品を作るために用意したレーザーカッターは、模型作りにも役立った。パソコンからデータを送ることで、設計図通りピッタリと厚紙を切り抜くことができる機械で、値段は20万円ほど。ほとんどの建物は、このレーザーカッターで切り出した部品同士を接着して構成している。
レーザーカッターと並んで活躍しているのが3Dプリンタで、こちらは「光造形式」という低コストの機材。エアコンの室外機や道路のガードレールといった部品を高い精度で作れるのは、この3Dプリンタのおかげである。
紙への印刷を多用するのもMAJIRI流だ。看板の文字が現実世界同様のクオリティで描かれていることが、模型としてのリアリティを高めている。
「看板などはインクジェットプリンタで印刷し、建物に貼り付けています。家電量販店で買えるような、普通のプリンタですよ。印刷物などは、実物を縮小コピーして使うこともあります」
設計には「Fusion 360」という3D CADソフトを使っており、個人やスタートアップ企業なら無料ライセンスで利用できる。肝心のパソコンも、3D CADのソフトを動かすだけのスペックはあるとはいえ、「ゲーミングPCより性能が低い」(MAJIRI氏)という、いわば普通のWindowsマシンである。
さすがにレーザーカッターは馴染みが薄いものの、3Dプリンタは数万円で買えるし、あとはインクジェットプリンタ、Windowsパソコンと無料ソフト……。こうして種明かしをしていくと、「誰でも始められる」のかと思ってしまうが……。