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 松竹 京都は党組織が全国一強固であると言われますが、鈴木さんはその京都のカリスマ的存在です。若いころ、立命館大学の一部の学生委員長をやって、まだ党員10人もいないところから、最終的に1000人を超える規模にまでに組織を育てた。

 斎藤 京都の党員さんたちも遇された人たちが多いわけですね。

 松竹 そう。だから彼らは鈴木さんを絶対に処分したくないはず。一方で、それで済むのかという空気もある。人間的な良心と、規約を楯に取った党中央の指導者たちの間で悩んでいるんでしょう。

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 斎藤 その流れのなかで、松竹さんだけが処分されてしまった。

 別の疑問の声として、「出版前に内部の正式ルートで意見表明できたはずなのに、そうしなかったのは不適切だ」という指摘もありました。

 松竹 その規約は知っています。私は党中央にもいましたから。ただそれで解決する問題は限定的です。

「公選は間違いだ」の大論文も

22年間、委員長に君臨する志位和夫氏 Ⓒ時事通信社

 斎藤 性質が違うと?

 松竹 ええ。たとえば昨年、こんなことがありました。講演会の講師に招いてくれたある団体が、告知記事を載せてほしいと赤旗の記者に話すと、「松竹さんの名前は載せないことになっている」と言われたと。それを聞いた私は赤旗に対し、「過去に処分されたわけでもないのになぜか」と質問を出したんです。すると、「こちらの間違いで、記事は載せます」と返事が返ってきた。実際に告知記事は載せてくれました。

 でも、党首公選の問題は、昨年8月に党建設委員会から「公選は間違いだ」という趣旨の大論文が出ていたので、機密でもなく、内々に執行部に伝えても検討の対象にはならない。みんなで決めたのだから後から蒸し返すな、という指摘なのでしょうが、この論文はそもそもそうした幅広い議論なく出てきたんです。

 ――昨年7月、朝日新聞が社説で、前年の衆院選、同年の参院選と比例区で相次いで議席を減らした共産党の実情について「閉鎖的な体質から脱却する必要がある」として、党首公選導入を提言しました。これに対して共産党は、8月の赤旗に長文の反論を掲載し、「党首を党員の直接投票で選ぶ選挙を行うということになれば、必然的に(略)派閥・分派がつくられていく」とはっきりと指摘を退けたわけですね。

 斎藤 この論文については、鈴木氏も前述の著書『志位和夫委員長への手紙』の中で、批判しています。参院選敗北後に執行部が声明で「ご意見をお寄せください」と発したから意見を出したのに、志位氏は「一斉地方選挙に向けて生かしていきます」と述べただけで何も具体的な回答をしなかった、と。

 松竹 そうなんです。少なくない党員が全員参加の党首選を行うべきだと意見を出したのに、全く“聞く耳持たず”だった。

(本稿は2023年2月13日に「文藝春秋 電子版」が配信したオンライン番組をもとに記事化したものです)

松竹伸幸氏と斎藤幸平の対談「シン・日本共産党批判」全文は、「文藝春秋」2023年4月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。