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「妻は神社でお賽銭をめちゃくちゃ渋るんです」

――そこから次第に仲を深めて交際に至るわけですね。

小川 初めてデートしたのは京都だったんですよ。意気投合したので、割とすぐに付き合いましょうという流れになったんですけど。それまでは「一体どういう家庭で育ったんだろうな?」って不思議に思うことも多くて……。

 一緒に神社を巡っていて、屋台とかでも「買ってもらったことないから」って子どもみたいに楽しむんです。それで神社好きなのかなと思ったら、お賽銭のところでめちゃくちゃ渋ってたんです。絶対にお金を出さない。1円も。見かねて「俺が出すから投げようよ」って言うんだけどそれでも嫌だと。その時は意味が分からなかったんですけど、後から聞いたら、統一教会の教義に則って(献金する親に)ずっとお金を取られてきたから、(神社の)神様にお金を預けるっていうのがまた違う洗脳にかかりそうっていう恐怖があったんです。

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――前提を知らないと、全く理解できないですよね。

小川 こっちとしては「え、何言ってんの?」みたいな感じです(笑)。みんな観光で来てるから形だけの人も当然いるし、そもそも神の存在を感じながら手を合わせてる人がどれだけいるのかっていう話じゃないですか。だけど、周りがみんな厚い信仰心を持つ環境で育ってきた彼女にはその感覚はないんです。やっとの思いで抜けたのに、また洗脳みたいになっちゃうのが怖い。当然付き合う前ですから、「どういう子なんだろうか?」と不思議に思っていました。

小川りょうさん ©文藝春秋

——その「不思議なキャラ」と思っていたものが、次第に過去のトラウマや経験から来るものだと、その後すぐに気づいたんですか。

小川 妻と付き合うようになって、パニック症状に悩む彼女を目の当たりにしてからですね。付き合う前にも相談を受けたりはしていましたけど、「こういうことを言ってたんだな」って腑に落ちる感じでした。

——「最初はピンと来なかった」という小川さんですが、明確に統一教会に問題意識を感じたのはこの時でしょうか。

小川 そうですね。ただ統一教会への問題意識というか……「なぜ妻はこんなに苦しんでいるのか?」の方が自分にとっては大きな問題でした。それを知るために、統一教会とは何なのか、信者である親と過去に何があったのか、教義とは何なのかを当事者意識で考えるようになりました。

 そうして交際を始めたのが2018年の4月末。同棲を始めたのが5月。そこから3年半付き合って、結婚しました。