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「PGファルコン」では撮影用モデルを完璧に再現した

―― 鷲見さんは元々、「ファルコン」の撮影用モデルに使用されたプラモデルパーツの解析に取り組んでいたのでは? 鷲見さんが開発協力したバンダイの「PGファルコン」(3月24日にスタンダードバージョンの一般販売開始)も、撮影用モデルを完璧に再現したことで話題になっていますね。

(「PGファルコン」の開発とその再現度については、鷲見さん自身がコラムを執筆されているので、併せてご覧ください)
http://bandaihobby.hatenablog.com/entry/2017/07/21/190000

鷲見 元々はパーツの解析からスタートしたんですが、これだけ魅力的で独創的な宇宙船をどんな人たちが作ったのか。「ファルコン」の解析を進めれば進めるほど、知りたくなってきたんです。

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 当時のILMのスタッフにとっても、「ファルコン」は特別な存在だったようです。

 主要モデルメーカーの一人で、ILMをけん引してきたローン・ピーターソンによれば、彼らはみんな「ファルコン」が気に入っていて、我も我もと、製作中のモデルに色々なプラモデルのパーツをくっつけたがったそうです。「月刊モデルグラフィックス」のインタビューで紹介されているのですが、モデルメーカー以外のスタッフの中にも、その魅力にはまった人がいました。

 彼は「ファルコン」がとても好きで、「どこでもいいから、『ファルコン』の何かを作らせてよ」と懇願し、船体の上に手すりかバルコニーのようなものを作った。だけど、それを見たジョー・ジョンストンは、あまりの出来の悪さに激怒して、彼の付けたパーツを全部むしりとってしまった。ピーターソンによれば、その時の彼のしょんぼりぶりが、本当に痛々しかったそうです。

―― はああ(ため息)。哀しいエピソードですねえ。だけど、鷲見さんもそのスタッフと同様、「ファルコン」の魅力にはまってしまった一人ではないですか。

鷲見 僕にとって、「ファルコン」のイメージを形づくった「原点」の一つは、エピソード4の公開後、アメリカの模型メーカーから発売された大型プラモデルです。当時は資料もビデオもありませんでしたから、映画を見るだけでは「ファルコン」の形を十分につかめなかった。だけど、このキットの箱絵には、全長約1.7メートルの撮影用モデルの大判写真がそのまま使われていて、それがものすごくかっこよかった。

 

  キットとしては、今から見ると大味だったのですが、大人になってから、このキットをベースにして、「理想のファルコン」を作ろうと、実際に撮影用モデルに使われたプラモデルを買い集めることを始めました。撮影用モデルに使われた実際の流用パーツを見ながら、それを縮小したものを自作し、キットの表面に一つ一つ貼り付けていったんです。

―― 気の遠くなるような作業ですねえ……。

鷲見 最初は気軽に始めたのですが、たまたま海外メーカーが再販していた、マツダのロータリーエンジンのプラモデルを見つけたんです。「ファルコン」の側面、コクピット(操縦席)のすぐ脇にすごく印象的なディテールがあるんですが、それがこのキットのパーツだということがピンと来た。

(上)実際の流用パーツ(下)「PGファルコン」の部品。写真をおよそ2倍に拡大して比較表示している。左上が欠けているのはコクピットと干渉するため。撮影用モデルも同様に削られている。

鷲見 もちろん、即購入したんですが、「『ファルコン』の『本物の一部』がこの手にある!」という、震えるような感激がありました。それからは「すべての流用パーツを解析し、入手したい」という思いに駆り立てられた。さらにロータリーエンジンのキットが元々は日本製だったのも、パーツ解析の深みにどっぷりとハマり込むきっかけでした。

鷲見氏は「ファルコン」に使われたロータリーエンジンのキットを、国内版初版から現行メーカー品2版まですべて所有している。発見したことが嬉しくてつい買い過ぎるとか。氏はこれを自分自身で「ウレシ買い」と称している……。