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中国経済の「日本化」が進行している

 多分に政治的な思惑をはらんだピークチャイナ論に説得力を与えているのは、中国の総人口が22年に減少に転じたことだ。14年まで35年にわたって続いた一人っ子政策の影響は大きく、これから高齢化が猛スピードで進む。中国政府は35年前後には60歳以上の人口が全体の30%を超えると予測する。

 折しも中国では不動産不況が深刻化している。21年には不動産デベロッパー大手の恒大集団の経営が事実上破綻した。23年に入ると、同業の碧桂園でも資金繰りの悪化が表面化している。すでに上場しているデベロッパー55社のうち30社以上でデフォルト(債務不履行)が生じており、その多くが民営企業だ。

 中国では住宅購入者の中心となる30~34歳の人口が21年末には1・2億人いた。これが31年末には8000万人に減る見通しだ。総人口の減少という事態に直面して、不動産市場の将来に悲観論が広がるのはやむをえまい。不動産需要の減退は鉄鋼などの素材、家電をはじめとする耐久消費財など幅広い分野に影響する。投資意欲の落ち込みは不可避だ。

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 バブル崩壊と人口動態の変化によって成長力が落ちていく姿は、日本を連想させる。そのため、中国経済の「日本化」を懸念する声が世界中で広がった。

©AFLO

かつての日本との最大の違い

 いま中国で懸念されているのが、かつて日本が経験した「バランスシート不況」が中国で再現されることだ。これは資産価格下落を受け、企業が生き残りのためにバランスシート圧縮を最優先するようになる状況を指す。投資よりも債務返済にカネを回す結果、スパイラル的に景気が悪化する。中国の企業債務はこの10年で急速に膨らんでおり、家計・政府と合わせた債務残高はGDPの300%を超える規模である。その逆回転が始まるというわけだ。

「バランスシート不況」という概念のうみの親である野村総合研究所・主席研究員のリチャード・クー氏は「かつての日本との最大の違いは、中国政府はバランスシート不況という病気の存在とその対処法を知っていること」として、中央政府による大規模な財政出動により不動産不況を打開することを提案している。