たとえば二人で一緒にいる時に、突然片方が倒れたとしましょう。本人は意識がない状態です。病院がここから家族を探したりコンタクトを取ったりするのは、とても大変です。そのために事実婚であるパートナーに話を伝えたり、聞いたりはしてくれるところも増えました。だって目の前に「親族に近い人」がいるのだから、みすみす他人扱いしてしまうのはもったいない。ただ医療の判断を委ねてまでくれることは、難しいかもしれません。
また全ての医療機関等が受け入れてくれる体制とは、まだまだいえません。住民票が別々の場合には、まったくの他人と扱われる可能性が大です。最終的に事実婚は家族とは認められず、蚊帳の外という可能性もあり得ます。この先変わっていくかもしれませんが、現段階では籍の重みを認識しておいた方が良さそうです。
それが分かっていれば、備えておけばいいだけ。
代理権契約や任意後見、死後事務委任の締結を、第三者である事実婚のパートナーとしておけば良いのです。加えて財産に関する遺言書があれば、税金のことはさておき、ほぼ家族と同じことになりますね。
でもこの手間を踏んでおかないと「家族ではない」という理由で、いろいろなことで排除される可能性があることも把握しておく必要があります。
残念ながら〇〇家の墓にも、一緒には入れません。そもそも墓には入らない(散骨等)という方には問題がないのでしょうが、じっくり考えていくといろいろあります。片方が病気や認知症等で判断能力がなくなってしまえば、もはや入籍(結婚)することもできません。事実婚を選択している方は、その理由や対処法、今後入籍する可能性があるならそのタイミング等もしっかり話し合っておきましょう。
タイミングを逸する前に備えておくことの大切さ
私はこれまで、あちこちで日本はこれから「一億総おひとりさま」時代なのだと、ずっと言い続けてきました。
それでも自分には嫁がいる、子どもがいる、パートナーがいると、あまり危機感を持っていない人が多いのが現実です。そういった家族らの存在ですら、どちらかが先に亡くなるのはもちろん、どちらかが認知症になるなど、何らかの事情で頼れなくなることもあるということは、みなさん想像していないのでしょうか。
国もやっと動き出してはきましたが、基本は『サザエさん』に象徴されるように家族がなんとかするというスタンスなのです。日本の今の制度は、全ての日本国民にはいつでもすぐに駆けつけてくれる家族がいる、ということが前提で成り立っています。
ところが現実は、未曽有の少子高齢化。
この事態は先代たちが経験していないことなので、対処法も見つかっていません。私たち自身が将来を想像し、備えておかねばならないのです。