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未来に向けてベアドッグとハンドラーの育成へ

ツキノワグマは冬眠に備えて木の実を食べ、体重を増やす。12月まではクマの追い払いが続く。 著者提供

 現在、4頭のベアドッグが軽井沢で活動している。タマとナヌックはシニア期を迎え、タマの子で軽井沢に生まれ育ったレラとエルフは5才になり働き盛りだ。さらにレラは、2024年の初夏に、繁殖を予定している。年齢やタイミングから、次に控える自然繁殖が最後のチャンスだという。

「世代を繋いでいかないと、ベアドッグの技術は残すことができません。ベアドッグの育成には先住犬の存在が大きく、今いる犬たちが元気なうちに繁殖を成功させ、犬を育ててひとり立ちさせる必要があります。それがちょうど今なのです。軽井沢にベアドッグの体制を残していけるよう、繁殖の成功を祈りながら準備を進めています」

母犬についてクマの追い払い訓練を行う。画像提供/NPO法人ピッキオ

 タマとナヌック、レラ、エルフがいる軽井沢で、繁殖と育成を行い、次の世代を育てること。田中さんは、クマの追い払いやパトロールとともに、ベアドッグの技術を繋ぐための繁殖の準備にも力を注いでいる。さらに12月11日からは「ベアドッグ未来プロジェクト(https://readyfor.jp/projects/picchio-beardog2024)」のクラウドファンディングに挑戦し、支援も募っている。

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麻酔で眠らせたクマとの対面トレーニング。カレリアン・ベア・ドッグは、忠誠心が強くプライドが高い。訓練はポジティブに、成功で終わらせるようにしている。画像提供/NPO法人ピッキオ

 さらに、人も育てていくという。ベアドッグのハンドラーは、ほかの働く犬とは異なり、1ドッグ1オーナーという特徴がある。仕事上のペアだけでなく、自宅でも一緒に過ごし、生涯ともに生きていく関係だ。ベアドッグを訓練し、出没現場でハンドリングをするハンドラーは、野生動物全般の知識のほか、クマの行動パターンや生態の知識を持っていることも必須だ。

 軽井沢でクマ対策が始まって25年。地域を守りベアドッグの技術を繋いでいくために、田中さんとベアドッグの活動はまだまだ続いていく。

田中純平(NPO法人ピッキオ クマ保護管理スタッフ)

北海道知床国立公園のヒグマ対策職員や北海道環境科学研究センター(現北海道総合研究機構)でエゾシカ調査職員として働いたのち、北海道大大学院でエゾシカの個体群動態に関する研究にて修士課程を修了。2001年よりNPO法人ピッキオに所属し、軽井沢のクマ対策を行う。2004年に米国のWRBIと連携し、ベアドッグをアジア初導入。2018年にベアドッグ繁殖プロジェクトに成功する。

INFORMATION

★「ベアドッグ」を未来へ繋げるために……田中さん主導のもと、クラウドファンディング実施中!

https://readyfor.jp/projects/picchio-beardog2024