「正直に言うと、先行の3社が持っているプラチナバンドと呼ばれる周波数帯域は障害物があってもそれを回り込んで進む性質があるのですが、我々が国から割り当てられた1.7GHzにはその性質がなく、屋内や繁華街、高層ビルなどでつながりにくい場合がありました。
また、我々はこれまでもKDDIさんとローミング契約を結んでいたのですが、東京・大阪・名古屋の繁華街などが対象地域に含まれていませんでした。しかも、我々自身の電波は「データ使用量無制限」でしたが、KDDIさんから借りる電波についてはデータの使用量制限があり、一定量に達すると通信速度が落ちる仕組みになっていました。
KDDIさんとの新たなローミング契約では東名阪の繁華街でもKDDIさんのプラチナバンドが使えるようになり、しかもデータの使用量制限をなくしました。
技術的な問題があって、KDDIさんの電波を全国で使えるようになるタイミングが10月末以降になってしまったのです。それで『なんだ、まだつながりにくいじゃないか』と、『Rakuten最強プラン』を5月に発表した直後に期待して加入してもらったお客さんを落胆させてしまいました」
赤字の原因はモバイル事業
三木谷会長は「多くの地域では、すでに『つながりやすくなった』と実感してもらっていると思います。それが解約率の低下に現れていると理解しています」と締め括った。
楽天モバイルの通信品質を改善したことで、「危機」を乗り越えられるのだろうか?
三木谷会長は次のように答えた。
「経営には絶対的な自信を持っています。赤字の原因はモバイル事業で、楽天市場や楽天カードなど他の事業は絶好調です」
「昨年の6月に『Rakuten最強プラン』という新しい料金プランを発表してから契約件数は純増に転じていて、8月下旬に500万件を超え、年末に600万件まで伸びました。(中略)このペースが続けば年内に800万件を超え、楽天モバイルの単月黒字、さらにグループ全体の黒字化が視野に入ります」
と強気の姿勢を崩さない。
三木谷浩史会長は、このインタビューで、ドイツで採用された楽天の「完全仮想化技術」やタレック・アミンCEOの突然の退任、NTT法廃止に反対する理由などについても答えている。
インタビューの全文は、「文藝春秋」2024年3月号と「文藝春秋 電子版」(2月8日公開)に掲載されている。