『青い壺』(有吉佐和子 著)文春文庫

 亡くなって今年で40年になる小説家・有吉佐和子。13年前に復刊された連作短編集が、最近売り上げを伸ばし、単行本を併せて累計50万部を超えた。無名の陶芸家が生み出した青磁の壺が、売られ、盗まれ、さまざまな人の手に渡る。本作が“再発見”される過程も、作中の青い壺のように有為転変を辿った。

 復刊のきっかけは、文庫編集部の山口由紀子さんが、資料室で過去に刊行された『青い壺』を手に取ったこと。彼女はもともと有吉ファンだったが、本書は初読。すぐに惹きこまれ、暗い資料室で最後まで読み終えた。

 復刊され、版を重ねてはいたが2年前、帯文を『3000円の使いかた』や『財布は踊る』の作家・原田ひ香さんの《こんな小説を書くのが私の夢です》に替えたことでブレイクする。

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 そして昨年、有吉佐和子を知らなかった25歳の営業担当者が、もう一段階“仕掛ける”ことを提案した。

「大きく展開しているわけではないのに、一部の書店でかなり冊数が出ており、書店さんも『化け物』と驚いていたそうです。それで、百貨店内の店など女性客が多い書店で置いてもらい、新聞広告を打つと“爆発”した。作家たちが羨んだという有吉さんの筆力でスラスラ読める一方で、家族ドラマであり、ミステリーであり、女の生き方の物語でもあるという深さもあったからでしょう」(山口さん)

2011年7月新装版発売。初版1万5000部。現在27刷24万6000部