再就職後の賃金の差異
2021年度の民間給与実態統計調査によると、日本人の平均給与は443万円。これを年代別に見ると20~24歳269万円、25~29歳371万円、30~34歳413万円、35~39歳449万円、40~44歳480万円、45~49歳504万円、50~54歳520万円となっている。どの年代においても自衛官のほうが高いことがわかる。
給与だけを見て、「自衛官、案外恵まれてるじゃん」と思うか、「命をかけてその程度か」と思うかは人によるだろう。
そして再就職後の賃金は、職業によってももちろん差異はあるが、大きくは階級によって異なる。公務員的な発想から、「同じ1佐だったのに、あいつは1000万円で俺は500万円しかもらえない」といった事態はまず発生しない。将官であれば少なくとも800万円以上の水準にあり、1000万円を超えるケースも珍しくない。
そして1佐で500~700万円台、2佐で400~500万円台、3佐で400万円台、尉官で400万円前後、准曹で300万円台が基本となっている。また再就職先の給与は、地域でも異なる。やはり関東近辺は高いが、北海道、東北や九州地方は低い傾向にある。
命をかける軍隊組織だからといって特別扱いされない
確かに、退官までの年収は決して低いわけではない。とはいえ、いまや自衛官が年金をもらえるようになるのは65歳。民間企業の勤め人とまったく同じ年齢だ。年金がもらえるまで10年間ほど、働かずに生きていくという選択肢を取れる自衛官はそう多くはないだろう。自衛隊をよく知らない人の中には、「恩給のような形で、退官するといくらかもらえるのでは?」や「その分退職金がいっぱい出るんでしょ?」といった思いを持っている人もいるようだ。その点についても簡単に説明したい。
年金については現在、65歳になるまでにもらえる年金はない。確かにかつての軍隊には、ある程度在籍するか、戦争で怪我をした場合などに「恩給」をもらえる制度があった。具体的な在籍年数は、実際に軍隊にいた期間と加算年を合わせて准士官以上13年、下士官以下12年となっている。要件に当てはまる方々への恩給は、令和となったいまも払われ続けている。
ただし、制度としては1959年の国家公務員共済組合法の施行に基づき恩給制度から共済年金制度に移行。命をかける軍隊組織だからといって特別扱いされなくなった経緯がある。それでもかつては共済分のみ65歳以前に支給されたが、厚生年金制度に統一されたいま、それもなくなった。
ちなみにアメリカでは、軍人の年金制度が一般公務員とは別に設けられており、20年勤務すれば退役直後から年金を受給することができる。つまり、高卒で入隊した場合には、40歳を前にして年金を受給することができるというわけだ。