日本の母子家庭の貧困率は、51.4%。実に、2人に1人が貧困である。多くの女性たちは、正規雇用で就職したあと、結婚・出産を機に退職し、専業主婦やパート主婦になるが、夫との離死別などにより簡単に最下層に転落してしまう。なぜ、そのような格差がうまれてしまうのか?

 ここでは、「階級・格差」研究の第一人者・橋本健二氏が、「女性の階級」の実態を綴った書籍『女性の階級』(PHP新書)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)

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新型コロナ感染症が女性にもたらした変化

 新型コロナ感染症の蔓延が、女性たちに対して、男性たち以上に多くの損害を与えたことは、よく知られている。といっても、女性たちの方が感染しやすかったとか、症状が悪化しやすかったというのではない。多くのデータは、むしろ男性の方が感染しやすく、また重症化しやすかったことを示している。

 しかし、経済的な打撃は女性の方が大きかった。多くの商店や飲食店が休業を余儀なくされ、そこで働いていた多くの非正規雇用の女性たちが職を失った。また学校が休校したため、家に居続けることになった子どもたちの面倒をみるために、多くの女性たちは職を休んだり辞めたりせざるを得なかった。

©beauty_box/イメージマート

 ここでは新型コロナ感染症の蔓延が女性たちにもたらした変化を、2022年3大都市圏調査のデータにもとづいて、階級別にみていくことにする。なお、この調査が行われたのは2022年の1月から2月にかけてであり、当時は感染が爆発的に拡大する直前の時期にあたっていた。2月の段階でみれば、新型コロナに感染した人の比率は、東京都が7.95%、愛知県が4.20%、大阪府が7.35%だった。このように、感染がピークに達する前の段階の調査結果であることには注意が必要である。

図表6.1(『女性の階級』より引用)

 調査では、新型コロナ感染症の感染経験を尋ねるため、図表6.1に示したような設問を設けた。選択肢は7つである。1は「感染したことはない」で、これを選択した人は「未感染」と分類する。ただし検査をしたことがない人が、まったく自覚症状がないままに回復して、自分は感染したことがないと考えているケースも、ここに含まれる可能性がある。