「中国の両親からは、かなりの金額の仕送りを...」
「もともと『A計画』は02年11月にXという中国人が200万円、魏と同じ専門学校に通うZが80万円、そして店長になったKが100万円を出して始めました。中国人を対象にした営業をしており、やって来る客はネットのゲームに興じたり、母国の友人とのメールのやり取りをしていました。ただ、Kは複数の友人から計数百万円のカネを借りたまま店に来なくなり、03年3月には『A計画』を閉めています。そのため4月からは、Xが店名を変えて店を続けていました」
『A計画』を閉めて以降、KはGという中国人の男や、王や楊、魏とともに、カネ目当てでいくつもの犯行計画を練っては実行している。それはKの元アルバイト先の飲食店経営者方での強盗や、楊のアルバイト先の飲食店における窃盗、さらには日本に来たばかりの中国人留学生への強盗などである。
魏がこうした犯行に加わった理由について、彼の一審公判での弁護側による弁論要旨には次のように記されている。
〈被告人(魏)は、平成15年(03年)3月末頃、在留資格の更新申請に必要な在学証明書を専門学校から発行してもらうために授業料を払い込む必要があったが、手元に十分な資金がなかった。しかしながら、それまで中国の両親からは、かなりの金額の仕送りをしてもらっていたため、送金の相談をすることがためらわれ、K(原文実名、以下同)からお金を借りることとなった。そのため被告人は、Kに強く恩義を感じ、その後のKからの頼みを断りにくくなってしまったのである〉
王と楊のふたり、もしくは王とKと魏、さらにはKと魏とGといった具合に、犯行によってメンバーは異なるが、4月中旬に王が魏に楊を紹介したことで、そこからまた新たな犯行が計画されるようになる。
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本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
平成凶悪事件と「その後」 平成15年 福岡一家4人殺人事件篇
第1回 犯人逮捕を喜ぶはずの遺族の周辺から「結末に納得がいかない」との声が……
第2回 「どこかに依頼した人間が別にいたのでは」という思いは消せない
第3回 本当に3人だけの「カネ目当て」の犯行だったのか?