友人からの忠告
違和感を抱えながらも愚直にインターンを続けていたが、3カ月ほど経つ頃に、佐藤さんがふと我に返る瞬間が訪れた。
「たまたま別の大学に通っている友人と話をすることがあって、『お前ちょっとそのインターンおかしいぞ』と忠告されたんです。冷静に論理的に話してくれたおかげで、『あれっ? 俺、このままこのインターンをがんばっていていいのかな?』って初めて考えました。その時は会社の人に『こんなこと言われたんですけど大丈夫でしょうか?』と相談したんですが、『そういうアンチは無視しろ』『そういうことを言ってる奴は成功しないから』と否定されましたね」
疑問を投げかけるも、精神論の“ブラック営業”を強要
佐藤さんが不信感を持って会社の状況を見ると、徐々にブラックな体質が目につき始めた。
「週に1回、必ず出席することになっていた全社集会も、よく考えたらおかしかった。集会は週の初めに設定されていて、夜の7時にオフィスに集合で、終わるのは夜の10時、11時頃。自由に帰ることもできなかったのでガッチリ拘束されていました。たとえば集会では新しく入ってきたインターンの自己紹介があるのですが、毎週のように新しいインターンが入ってくるということは、それだけ人の出入りが激しいということですよね」
社員たちのインターン参加者に対する言動にも疑問を持たざるを得ない場面があったという。
「営業練習で、『もっと強引に行けよ、他の奴はやってるぞ』と責められました。友人から『おかしいんじゃない』と言われて疑問に思ったことを社長に直接ぶつけたりもしたんですが、『そういう奴らは無視しろ』『どんな環境でもやれる人間が正義だ』といった精神論ばかりで。最初の頃は成功するための意識をそれっぽく言ってるように聞こえたのですが、今思うと話をズラしてるだけでしたね」
簡単にフェードアウトはできなかった
「何回やっても契約は全然取れないし、友達に営業するのも申し訳ない気持ちになってきて、営業練習のために来社してもらうつもりだった友達と、練習予定をキャンセルして遊びに行ったりするようになって。やる気をなくしたんです。営業練習はもちろん、出席必須だった週1の集会も欠席するようになりました」
最後は辞めたいという意思を会社に伝えてフェードアウトしようとしたのだが、簡単には辞めさせてもらえなかったという。
「社員の態度が突き放すように冷たくなって、会社に行かない日も毎日のように電話がかかってきて行動確認をされたりするようになりました。学生統括の人にも『なんとか3月まではがんばろうよ』と説得されたり。それでも、もう耐えられなくなっていたのでフェードアウトしようと全体集会も休むようになったのですが、追い込みもきつかったです。熱が出たという言い訳で体温計の写真を送ったんですが、会社からはビデオ電話をしてこいとメールが来たり、最後の頃は『お前マジ、ナメてるな』という感じで詰められました」