『来なかったら家まで行くからな』

 そんな状況の中、会社は最後の最後まで引き留めてきたという。

「この会社では1年に1回、グループ企業が全員集まって優秀な営業マンを表彰したりするパーティがあって、この年は東京で開かれることになっていたのですが、そこにも強引に参加させられそうになりました。その頃はもう辞めたいと伝えていたし、欠席を伝えたところ、社長から『お前、絶対来いよ。来なかったら家まで行くからな』と迫られたんです。結局、パーティは欠席しましたが、後になって東京までの交通費やホテル代などの費用を『おまえの分を立て替えといたから払えよ』と請求されました。さすがにそんな責任はないので無視しましたが」

©Trickster/イメージマート

注意喚起の情報がなかった驚きの理由

 事前の情報収集の段階で、ブラックなインターンに注意を喚起するような情報は目に入ってこなかったのか。

ADVERTISEMENT

「僕たちの世代はちょうど大学に入学した年にコロナ禍が始まっていて、情報収集は就活サイトやXなどのSNSだったり、YouTubeで配信されている就活系のコンテンツが中心でした。注意深く情報収集すればあったのかもしれませんが、少なくとも私が見ていた中にブラックインターンの注意を喚起するような情報はなかったです」

 しかも、始める前には気づかなかったが、実はこのインターンを募集する就活サイト自体が、この企業の子会社が運営していたのだという。

「マトモな就活サイトなら、こんな企業を掲載していればすぐクレームで信用を無くしますけど、その心配もないということなのでしょうね」

佐藤さんが最も伝えておきたいこととは?

 佐藤さんはこの会社を最後にインターン活動を終え、その後は通常の就活を続けて希望の職種で内定を得た。ただ、こんな体験をしたことで、これからインターンを考えている学生にこれだけは伝えておきたいことがあるという。

「就活は自分で情報を集めて判断しなければなりませんが、ちゃんとした企業ばかりじゃないので、応募する前に信頼度や評判は絶対に調べてから応募した方がいい。私もきちんと情報収集をしなかった自分が恥ずかしかった。同じような失敗をしないためにはこういうブラックなインターンが存在していることを周知していく必要があると思います。実際、この企業は今もインターンを募集していますからね」