大学生の新卒採用における就業体験(インターンシップ)は定番となっている。だが、これらの企業の中には就活生を労働力として搾取しようとする「ブラックインターン」が存在する。そんなブラックなインターンに遭遇してしまった体験を昨年大学を卒業したばかりの若者に語ってもらった。

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当時はそこまで気に留めていなかったが…

 関西の中堅私大に通っていた佐藤裕太さん(仮名)は昨年大学を卒業した社会人1年生。すでに広告会社で働いているが、就活の中で「ブラックインターン」に当たってしまったことがあったという。

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「大阪にある営業代理店の企業のインターンでした。当時は、将来的に営業職に就きたいという漠然とした目標もあったのでエントリーし、3年生の9月からインターンをすることになりました。その会社はAという企業で、創業して3~4年、社員は総勢30人程度の規模です。ただ、これは行ってみて初めて分かったのですが、正社員は社長を含めた数人しかおらず、残りは全部学生のインターンが占めていたんです。もちろん事前に企業サイトなども見にいったりしましたが、特に怪しさは感じませんでした。ただ、今考えるとサイトには『就職無双!』『営業に強くなる』のような強い煽り文句が多かったなと思います。とはいえ、当時はそこまで気に留めませんでした」

©graphica/イメージマート

 インターンに採用されるまで面接は2回あった。2次面接では学生のインターンを統括している現役大学生が面接官だった。

「その人は某有名私大の4年生で、大手人材会社などの大企業をはじめ、いくつもの企業から内定を取っていた。そんな人が『このインターンを頑張れば将来役に立つし、就活にも有利になる』と熱心にプレゼンしてきたので、『自分も同じように成長できるかもしれない、就活もうまくいくかもしれない』と思いました」

インターンの内容とは?

 募集要項で会社側が提示していたインターンの条件はどのようなものだったのか。

「1週間に1度だけ全社集会のようなものがあって、そこに出席さえすればあとは基本的に自由出勤でした。交通費は出ません。給料に関しては完全歩合制で、主な商材は携帯電話とウォーターサーバーでした。新人期間は上限があってウォーターサーバーの契約1件で7000円ぐらいの報酬だったと思います。自分としては、将来のために営業のスキルを訓練しながら、うまくいけばバイト代わりにもなるし一石二鳥だな、くらいに当時は考えていました」

 だが、佐藤さんがインターンを始めた4月から8月までの間に取れた契約は2件。うち1件は自分で携帯を契約したものだった。

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