日が経つごとに、指示に違和感を持った

 インターンに通い始めた当初は、そこまでおかしな点は感じなかったという。

「自由出勤だったので自分の好きな時間に会社に行き、そこで営業の心構えを説明してもらったり、同僚のインターンや先輩たちを相手に営業練習をしたりしていました。誰もいないときは一人で営業のロールプレイもしたり。こうした研修は自分も素直に取り組んでいたので、営業ってこうやるんだと、それなりに勉強になっていました」

 しかし、まともに見えたのは最初だけだった。日が経つごとに営業練習の中で、社員からの指示に違和感を持つようになったという。

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「早い段階で社内での練習はほとんどやらなくなりました。その代わり自分の友人や知り合いを相手に練習するように言われたんです。それも電話とかではなく、会社まで来てもらってやるように強く言われました。『これはおかしい』と思い始めた最初のきっかけでした。

明らかに練習ではない、“本気の営業”をかけさせられる

 自分としては会社に来てもらった友達を相手に営業練習をするだけのつもりでしたが、実際には本気の営業をかけさせられるんです。営業には会社の先輩が同席していて、最初は見守る感じだったのが、話がうまくいきかけると、『こういうお客にはこんなアプローチをして攻めろ』『こういう話で契約まで持っていけ』とグイグイと口をはさんできて、本気で契約をさせようとするんです。ウォーターサーバーなんて学生相手には難しい商品ですが、『毎日水を買ってるような人はいるだろ。そういう相手に固定費を強調してウォーターサーバーを提案してみろ』と言われたり。契約まで行く見込みがなさそうな相手には、別な友人や知人を紹介させるようにという指示もありました」

 営業練習という形でインターン参加者の友人を集めさせ、騙し討ちのように本気の営業をかけさせていたという。

「そのうち自宅にいるときも、『今週中に10件アポを取ってこい』と言われ、インスタの友達に片っ端から電話をしたりもしました。さすがに後ろめたい気持ちもあったのですが、それでも営業ってこういうものなのか、と口には出せずにいました。ただ、私と同じタイミングでインターンに来ていた京大の学生はこの営業練習が始まってすぐ辞めていましたね。自由出勤なのでハッキリわかりませんでしたが、一緒に始めたインターンは15人ほどいたのが一人辞め、二人辞めという感じになっていきました」