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特集集まれ「インターネット老人会」

クイズ王・道蔦岳史が回想する「インターネット時代前夜のクイズフォーラム“FQUIZ”のこと」

クイズ王・道蔦岳史が回想する「インターネット時代前夜のクイズフォーラム“FQUIZ”のこと」

全国のクイズ好きがそこに集まった

2018/08/13
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当時の「意識高い」会員たちとのオフライン

 ニフティではそのための場としてフォーラムと呼ばれるブリティンボード(掲示板)システムを利用したコミュニティを多くのジャンルにわたって設立し、同好の士たちがそれぞれの嗜好で集い、活発な交流を進めていったのである。モータースポーツ(4輪)や、ワープロのオアシスユーザーのフォーラムを重点的に利用していた私は、RTと呼ばれていたチャット機能も利用して多くの会員と親交を深め、草創期のオフラインにもしばしば参加した。伝説のコンピュータ技術者や、漫画家、作詞家の先生など、通常では出会えないその世界の専門家や、当時の「意識高い」会員たちとの講演会やホームパーティでの交流などは、新たなコミュニケーションツールがもたらした至福の時でもあった。

道蔦さんが最初に使用したワープロ専用機 富士通OASYS 30SF IIのパンフレット

 そしてニフティ利用開始から2年後に新フォーラム設立を提言し、クイズ&パズルフォーラム(FQUIZ)が1991年(平成3 年)に創設され、私は新タイプのクイズ同好会を運営する側となった。それまではクイズ番組で活躍した人たちが中心となったり、大学のクイズ研究会が核になったりと、人と人との直接的なつながりで組織が広がり、活動を重ねてクイズサークルが成長していく形であったのだが、クイズ&パズル好きなら誰でも時と場所を越えて、多くの人々が瞬時に参加可能な場が誕生したのである。

「スイスのページに接続しています」

 FQUIZでは毎週水曜日の夜に四択クイズ大会を実施していたが、企画の開始前に現在地を聞くと、チャット画面上の数十人の参加者が日本全国から集まっているという光景を確認できて、クイズの新しい楽しみ方が生まれたのを実感したものであった。

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富士通OASYS 30SF IIのパンフレットには「情報の海を泳ぐ現代のビジネスハンサム」という言葉も

 しかしこの時代、まだ「インターネット」は世間では正体不明の言葉であった。ニフティのフォーラム代表者はシスオペと呼ばれていたが、ニフティは毎年このシスオペを全国から集め、新たな機能や運営方針の説明などを行うサミットを開催していた。この初期のサミットの中でインターネット接続の実演をするという機会があったのだが、当時のモザイクというブラウザで「スイスのページに接続しています」といった説明にも、多くの参加者は、どういうシステム? という反応であった。やがてこのインターネットの普及がフォーラムを衰退に導くこととなる。

 ニフティへの接続はアクセスポイントと呼ばれた全国各地の有料の回線へモデムを使って電話をかけるのが1990年代前半の主要な方法であったが、海外のネット業者のアクセスポイントを経由して日本のホストサーバーに接続するという方法も存在していた。私が海外からも毎日ネットに接続し、フォーラムの書き込みやメールのチェックが可能だったのも、このおかげである。

 

それでもフォーラム「FQUIZ」は続いている

 情報発信に重点を置いた当時のフォーラムの多くは発展的に解消したが、コミュニケーションを深めていくタイプのフォーラムは、形を変えて現在も存在している。私の主催するFQUIZもすでに27周年を迎え、同好の士に支えられてクイズ&パズルでの切磋琢磨を続けている。クイズそのものの楽しさが仲間の絆を深めてきたが、設立当初に想定していなかった成果は、このフォーラムで出会って結婚に到ったケースが10組を超えたということであった。

 私自身もその該当者であるのは、知る人ぞ知るである。

FQUIZの早押し機
クイズ王・道蔦岳史が回想する「インターネット時代前夜のクイズフォーラム“FQUIZ”のこと」

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