池上彰さんの新連載「WEB 悪魔の辞典」では、政治や時事問題に関する用語を池上さん流の鋭い風刺を交えて解説します!
【自由民主党・じゆうみんしゅとう】
自由と民主、両方の政治理念を独占している政治勢力。
【池上さんの解説】
自由民主党の総裁選挙が行われています。それにしても、この「自由」と「民主」という両方の理念を欲張って持っている政党の名前は、どうやってできたのか。
1998年の参議院選挙の直前、 当時の橋本龍太郎首相の夫人は、次のようなセリフを発しました。
「自由党に民主なし、 民主党に自由なし」 と。
野党の民主党と自由党のことを揶揄したのですね。思わず、うまい! と言ってしまいますが、では、自民党は、本当に「自由で民主的」な政党なのでしょうか。総裁選挙で所属の派閥議員に「必ず安倍晋三氏に投票します」という趣旨の誓約書を書かせる人たちがいるのに、堂々と胸を張れるのでしょうか。
それはともかく、そもそも自民党が誕生したのは1955年のこと。野党の左派社会党と右派社会党が合流したことで、巨大な野党が誕生。これを見た財界が、「このままでは社会主義革命が起きるぞ。保守勢力が仲間割れしている場合ではない」と圧力をかけ、当時の自由党と日本民主党が一緒になりました。
これまで競合していた同士が一緒になると、名前の順番でもめ事が起こりがち。このときにも「民主自由党」か「自由民主党」か、論争になったのですが、結局、自由民主党の方が語呂がいいということになりました。
これにより社会党と自由民主党の二大政党制になったことから、この政治体制は「55年体制」と呼ばれました。
二大政党制なら政権交代が起きて政治に緊張感が生まれるだろうと期待されたのですが、実際は、政権交代が起きることはなく、自由民主党の総裁選挙が、そのまま総理大臣選出選挙となってきました。
自由で民主的な総裁選挙になるのでしょうか。
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