病院内という特殊な環境で愛し合っていた男女。しかし退院後、彼が別の女性と話す姿を見た彼女は、激しい嫉妬から包丁を握り大暴れしてしまう……。知られざる「患者同士の恋愛」のリスクとは? また、自分が「大谷翔平になりたい」と語り、ハイテンションで周囲を巻き込む20代女性の症例とあわせて紹介。

 精神科医・駒木爽氏の新刊『精神科医おどおど日記——閉鎖病棟24時、本日当直、あらゆる精神疾患寝ずに診ます』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。なお、プライバシー保護のため登場人物の名前は仮名、一部のエピソードに脚色を加えている。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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2人のその後

 看護師長と相談のうえ、大迫さんは女性専用の病棟へ移動してもらうことになった。

 彼女は嫌がったが、「ほかの患者が入院するため」という名目で押し切った。病室移動後しばらく、見るからに気落ちしていた。

「大迫さん、こちらの病棟には慣れましたか?」「はぁ」

「夜は眠れていますか?」「はぁ」

 須磨さんに思いを馳せ、主治医の私など眼中になし。少し前に「私としたい?」と股間を触ってきた人と同一人物とは思えない。

 その後、薬物治療が効果を発揮し、私や男性看護師に対しての卑猥な言動も影を潜め、入院から3カ月ほどで大迫さんの退院が決まった。これで病棟の色恋沙汰ともおさらばだと思っていた。

 ところが、2人はわれわれの知らぬところで連絡先の交換を済ませていた。先に退院した大迫さんが病院を訪れて、須磨さんとの面会を希望するようになったのだ。

 面会の申請書には“交際相手”と記載されている。当院では親族以外の面会はお断りしている。面会を断られると、その代わりに手紙と大量の菓子類が須磨さんに差し入れられた。

 その後、須磨さんの治療も順調に進み、大迫さんから遅れること数カ月、彼も退院となった。通院日には一緒に来院し、待合室で手を握りながら診察を待つ2人の姿が見られたのだが⋯⋯。