外国人比率トップ群馬県大泉町の悲鳴

髙橋 幸春 ノンフィクションライター
ライフ 社会 国際

限界を迎えた“移民の町”のいまを追った

群馬県大泉町のブラジリアンプラザ ©時事通信社

 大泉町役場で取材に応じた町長の村山俊明は語気を強めてこう語った。

「ブラジル人をはじめとした外国人居住者を取り巻く問題は教育や納税、社会福祉など多岐にわたります。現行制度のままでは、地方自治体だけの対応で外国人労働者を受け入れることは、もはや限界です。大泉町の努力だけでは、『共生』は進まない状況にあるのです」

 大泉町は群馬県の東南に位置し、町の南側を利根川が流れ、対岸は埼玉県熊谷市になる。面積は約18平方キロメートルで、県内では一番小さい。ここは、国内有数の外国人比率を誇る“移民の町”である。人口約4万1800人のうち約7500人が外国人で、約18%を占める。

 パナソニック、スバルをはじめとした大企業の工場に加え、中小企業100社が集中する北関東最大の工業地帯で、2016年の製造品出荷額は7039億円で県内第4位。町民1人当たり約1700万円を稼ぎ出している計算になる。こうした大泉町の経済を支えてきたのが、日系ブラジル人をはじめとする外国人労働者だ。

 東武小泉線の終点、西小泉駅を降りると、県道142号線(旧国道354号)が東西に走り、通りにはポルトガル語の看板が目につく。国道沿いには、日系人向けに食材や化粧品、下着類を販売するスーパー「タカラ」がある。週末ともなると、埼玉県や栃木県、東京から訪れたブラジル人で賑わいを見せる。町の中心部にはブラジル料理店やバー、タトゥーショップが立ち並ぶ。

政府の“移民政策”

 私は1975年にブラジルに移住し、サンパウロで発行される邦字紙パウリスタ新聞(現ニッケイ新聞)の記者として3年間働いたことがある。そこで出会った妻は、広島生まれのブラジル移民1世を祖父に持つ日系ブラジル人3世だ。私にとって大泉町は身近な町で、40年前、日本に帰国して東京に住んでからも、定期的にブラジルの食材を求めてスーパー「タカラ」を訪れてきた。

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source : 文藝春秋 2018年11月号

genre : ライフ 社会 国際