八ヶ岳の険しい山道へ…想像を超えてきた深澤直人さんの「山小屋」

vol.68

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「ぜひ山小屋にいらしてください」

 そうおっしゃったのは、『文藝春秋』2024年10月号の「日本の顔」で撮影をさせていただいた、プロダクトデザイナーの深澤直人さん。無印良品の「壁掛式CDプレーヤー」、KDDIの携帯電話「インフォバー」、マルニ木工の家具「HIROSHIMA」などのデザインを手掛けてきた方です。

深澤直人さん ©文藝春秋

「日本の顔」では複数回にわたって取材に伺います。深澤さんの場合は、マルニ木工の新たにオープンした大阪のショールーム、良品計画の金井政明会長との打ち合わせ場面……などなど。最後に、仕事を忘れてリラックスしている場面を撮影させて欲しいとリクエストしたところ、冒頭の〝山小屋〟が出てきたのです。

 場所を聞くと、八ヶ岳とのこと。山梨県と長野県にまたがる豊かな自然に囲まれた日本有数のリゾートで、あちこちで温泉も湧き出ています。「山小屋って言っても、謙遜しているだけで、きっとお洒落な別荘なんだろう」。私はそう思っていました。

 しかし、最寄りの駅から事務所のスタッフの方の車に乗せてもらい、しばらくすると小綺麗な別荘地を抜け、車はどんどんと細く、険しい山道へと入っていきます。ガードレールなど無く、少しでも道を踏み外したら崖の下。当然、周りには家など見当たりません。そして車に揺られること約30分、平らな開けた場所に、突如、ポツンと木で作られた小屋が現れました。

最初に建てた「山小屋」 ©文藝春秋

 車を降りると、深澤さんや事務所の方々が迎えてくださいました。案内されて石で作られた門の中に入っていくと、そこにあったのは小屋が2つと、テーブルと椅子が並べられた木のデッキが1つ。

山小屋は八ヶ岳の大自然の中に佇む ©文藝春秋

「アメリカから帰ってきたとき、この1000坪ほどの土地に、自分で小屋を建てました。28年ぐらい前かな。基礎作りから何から、一切、人の手は借りていません。次に木のデッキを作り、その後でもう一つ小屋を増築したのです。コロナ前は事務所のスタッフたちも家族連れで来て、一緒に遊んでいたんです。今日は久しぶりに大勢で集まれました」(深澤さん)

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