日本を震撼させた平成の凶悪事件。事件後に流れた歳月は犯人・遺族の心境にどのような変化をもたらすのか。ノンフィクションライター、小野一光が現場を歩く。今回は「平成17年 大阪姉妹連続殺人事件」編 の第3回(全4回。第1回、第2回から読む)。
2005年11月に大阪市浪速区にあるマンションで、上原明日香さん(享年27)と千妃路さん(同19)姉妹を殺害した山地悠紀夫(同25。09年7月に大阪拘置所で死刑執行)は、その5年前にも殺人に手を染めている。
2000年7月のことだった。当時16歳だった彼は、母親である山地菊江さん(享年50)を殺害したのだ。
この事件について触れる前に、これまでの取材と裁判で明らかになった事実を元に、山地の生い立ちと、犯行に至る流れを説明しておきたい。
彼は1983年8月に山口県山口市で生まれた。母親の菊江さんは、20歳で農家に嫁いだが6年後に離婚。実家に戻り山口市内の呉服店に勤めていた29歳のときに、パチンコ店で働く1歳下の勇次さん(享年44)と出会って再婚した。そしてその4年後に悠紀夫が誕生している。彼に兄弟はなく一人っ子だ。
山地の小学校時代の同級生は言う。
「あいつはどこかまわりを小馬鹿にしたところがあって、遊んでいるときもみんなの輪に加わろうとしなかった。そんな態度でいるから、何人かでからかったりすると、キレて机とかを倒して学校を飛び出し、戻って来んかったこともよくあった」
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