凶悪事件が未来に残した教訓 なぜ二度目の殺人を防げなかったのか

平成凶悪事件と「その後」 平成17年 大阪姉妹連続殺人事件篇 第4回

小野 一光 ノンフィクションライター

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ニュース 社会

日本を震撼させた平成の凶悪事件。事件後に流れた歳月は犯人・遺族の心境にどのような変化をもたらすのか。ノンフィクションライター、小野一光が現場を歩く。今回は「平成17年 大阪姉妹連続殺人事件」編 の最終回(全4回。第1回第2回第3回から読む)。

 2005年11月に大阪市浪速区にあるマンションで、上原明日香さん(同27)と千妃路さん(同19)姉妹を殺害した山地悠紀夫(享年25。09年7月に大阪拘置所で死刑執行)。その事件の5年前である00年7月に、彼は山口県山口市で母親の山地菊江さん(享年50)を殺害していた。

 母親を殺害した事件における少年審判で、山地には、「少年院で3年程度の相当長期間の矯正教育が必要」との処分が下され、岡山中等少年院に収容された。

 精神科医で『岡山市こころの健康センター』所長の太田順一郎氏は、岡山中等少年院で山地と約2年間、22回にわたって面会を重ねた。太田氏は、母親殺害の理由について以下の話を聞いている。

「付き合い始めたばかりの彼女に無言電話をかけたこと、自分のおカネをくすねたこと、ひどい育てられかたをしたこと、の3つを殺害理由として答えました。それで、『その3つとお母さんが殺されることについて、バランスはどう思う?』と尋ねると、『同じぐらいの価値』と無表情で答えました。なので私が、『殺すってことは、相手の可能性をゼロにすることだけど、本当に同じ?』と再度聞くと、『ああ、そうか、それは……』と考え込む反応を見せました」

 太田氏は山地について、広汎性発達障害の一種であるアスペルガー症候群の可能性が高いとの診断を下していた。

 アスペルガー症候群は先天的なもので、症状として知的障害がない。普通に話していると問題があるとは思えないが、共感性に乏しく、感情ではなく理論でしか状況を理解できない傾向を持つ。そのため相手がどのように感じているかを忖度できずに、一方的に自分の意思を伝えるなど、他者との交流に影響を及ぼしてしまうことが多い。

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