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イベントレポート「文藝春秋×Domo リーダーズカンファレンス」

 新型コロナウイルスによるパンデミックは世界経済に多大な影響を与え、企業活動も市場環境に柔軟に対応できる大きな変革が求められている。 特に影響が大きいのが流通・飲食・小売り・サービス業界。同業界では、オフラインとオンラインの買い物や体験の統合や店舗とデジタルの情報がシームレスにつながりデータを融合させることで、より最適な顧客体験、新しい商品、サービスを提供しあらたな成長機会を創り出す企業が増えている。

 こうした時代を切り開く企業は、変化に対しどのようにアプローチし、成果を出しているのだろうか。また特に中小規模の企業では、限られたリソースの中でどのようにデータを活用しビジネスの成長を実現しているのか。

 本カンファレンスでは「CXを実現する『データ活用』と『デジタルシフト』の最適解」に焦点を当てた。BtoCの視点からビジョナリーホールディングス様、物語コーポレーション様に、BtoBの視点からNDIソリューションズ様に登壇いただき、消費者視点、提供者視点で考えるデジタルを通じた「サービスの提案」「顧客満足度の向上」「イノベーション」「企業の弾力性強化」を実現するためのデータ活用などについて考察。また、ITツールの選定から活用に向けた推進、価値を最大化するための組織戦略まで多様な視点から検証を試みた。

◆基調講演

 メガネスーパー・事業スピードを担保するためのデータ活用

宮森様㈰
 
株式会社ビジョナリーホールディングス
マーケティング事業部 マネージングディレクター
宮森 修仁氏

 宮森氏は2000年メガネスーパー入社。東京エリアの統括ストアディレクターを経て、13年にマーケティンググループに異動。900万人の顧客データと購買データを基にした、DMのシナリオ設計・実施・分析までを一括して担当した。17年からビジョナリーホールディングスで店舗の接客をトリガーとしたDMや子供向けのサブスクリプションなど家族LTVの向上にも兼務で取り組む。21年より同社執行役員、マネージングディレクターに就任。現在はデータドリブン接客の構築やeスポーツとの取組みに注力している。

 宮森氏は冒頭、「販促も分析もすべてMAや他者任せになってしまっている昨今。それらを自分事化し、このニューノーマル時に改めて顧客の行動を分析し、最適な施策を打つ判断を自分たちで行うことが必要」と問題提起。

 新規参入社の影響を受けた眼鏡販売市場の競争激化により、売上げ大幅減、3度に渡る債務超過を経験したメガネスーパーは、経営陣の交代を機に「モノ売りからコト売りへ」転換し、付加価値サービス(接客力、検査力など)を高めて業績のV字回復を成し遂げた。

 今も、l自分たちの強みと認識している徹底的な付加価値向上戦略を実施している。コロナ禍において急に顧客行動が変わったわけではない。変化が一気に加速しただけ。国顧客の変化は常に起きていて、その変化に常に対応し続けていくことが大切、と宮森氏は強調した。

宮森様プレゼン
 

 コロナ禍におけるマーケティング(顧客)の変化は

今までの流れが加速
優先順位の変化
意思決定のスピードと柔軟性がさらに重要に!

 の3点。朝令暮改の柔軟な対応が大切と宮森氏は認識している。

 ビジョナリーホールディングスでの「データ」に対する考え方は

良いも悪いも、何をやるという前提でデータを取る
=マーケティングの精度を高めるためにとにかくデータを取る。お客様の声を、特にリアル店舗で生の声を徹底的に聞く。そしてスピーディに各施策につなげる。
右脳50、左脳50
=POSのデータと現場・店舗での接客情報の融合が大切。データ分析だけでもダメ。数字を見る能力や定量的な判断をする統計知識と共に、お客様の心理状態やインサイトを深く読み解く能力が必要。店舗スタッフの温度感を大切に。
購入以外のお客様との接点も大事にする
=POSレジに反映できない情報や来店した際の行動や細かい情報は必ず記録に残し、使ってから買い換えまでの行動・情報を分析し活かす、カスタマージャーニーを見据えた、深い接客ができる“データドリブン接客”を。
宮森様㈪
 

 POSデータのほか、様々なデータが幅広く取れてきている。来店前、来店時、来店後のフルカバレッジが重要。「顧客セグメント」と「コミュニケーション」の2つのデータ箱が絡み合い、顧客戦略を広範囲でカバーしている、と現状を報告。最後に「特に大切なことは机上の理論構築や分析に時間をあまりかけず、実際に走りながら、細かく検証しスピーディーにチューニングすること」と締めくくった。

◆課題解決講演

 データドリブン組織の構築が事業成長のカギ
〜 ヒト・データ・システムをシームレスに繋ぐDomo 〜

後藤様㈰
 
ドーモ株式会社
シニアソリューションコンサルタント
後藤 祥子氏

 後藤氏は2018年7月Domo(ドーモ)入社。Domoを活用して課題を解決するソリューションコンサルタントとして、顧客企業のPDCAサイクル改善やデータドリブン文化の推進、ビジネス課題の解決と最適化推進に従事している。 同社入社以前は、日本IBMにおいて約16年間にわたりデータウェアハウスやデータベース、BI(ビジネスインテリジェンス)を軸としたプリセールスや、ITアーキテクトとして主に流通業の顧客を担当した。

 SaaS型BIソフトウエア・クラウドサービスであるDomoは、

・多様なビジュアルでデータを可視化できる
・大量のデータをローコードでリアルタイムに繋げて共有できる
・組織の意思決定に関して高い評価を得ている

 と、ユーザーに高く評価されている(※ITreview Gold、富士キメラ総研などの調査による)

 急速に変化する環境において、スピーディーにビジネスを動かすために必要なのは、常に正しいデータをモニタリングできる環境があることと、アクショナブルに動くことの2点である、と後藤氏はまず提唱。

 同社が考えるDX(デジタルトランスフォーメーション)では

・さまざまな場所にあるデータを集約し、ビジネスに関する多様な問いに即座に答えられるか?
・データの背後にある、問題の真の原因を特定するために、組織をまたいでコミュニケーションした上で知見を活かせるか?
・効率的にデータを活用し、そして改善し続ける仕組みが提供されているか?

 の3点が為されているかどうかが鍵だ。Domoでは、データの管理から業務改善まで必要な機能がオールインワンで提供される。「全社一斉DX推進」といった施策は中小企業にとってはかなりの負担になるが、Domoはまず一つの部門・部署に導入し、その後、データ活用についての理解が深まったところで横展開で繋げていくということも可能だという。

後藤様プレゼン
 

 Domoでは、データの管理/自動化からビジネスの最適化(フローは、接続→保存/管理→準備→可視化→共有→予測/通知→拡張/展開)までアシストができるクラウドデータプラットフォームと技術面、ビジネス面両方で顧客に伴奏するコンサルタントなど人的サービスも提供している。

 Domoは、MAツールなど外部へのデータ連携を効率化しデータエコシステムにより新しい収益源を作り出す「Writeback Connector」や、外部レポートを効率化し、顧客満足とサービスの継続利用を促進し、同じくデータエコシステムにより新しい収益源を作り出す「Domo Everywhere」といった最新の機能も備える。常に顧客が必要な機能を先読みし、全世界レベルで迅速に開発できるのがDomoの強みでもある。
 
Domoのひととおりの紹介のあと、実際の多彩な画面(主に“ダッシュボード”と“カード”)をディスプレイに表示してのデモンストレーションを行い、実際の企業におけるDomoの利用・活用シミュレーションを詳しく説明した。

後藤様㈪
 

◆特別対談

 先行き不透明な今 取り組むべき企業変革
~ 自ら行動を起こせる力「現場力」をもたらすデータ活用とは 〜

岩井様㈰
 
NDIソリューションズ株式会社
代表取締役社長
岩井 淳文氏
川崎様
 
ドーモ株式会社
プレジデント ジャパンカントリーマネージャー
川崎 友和氏

 最後のセッションは、NDIソリューションズの岩井氏とDomoの川崎氏の対談。
岩井氏は1983年日本アイ・ビー・エムに入社、2008年より同社執行役員。13年日本電通に入社し、常務執行役員ITソリューションズ事業部長、グループ戦略担当等を歴任したのち、16年よりグループ会社のNDIソリューションズ社長にも就任。現在は同職、日本電通副社長の他グループ会社2社の社長も兼任し、経営者視点でのDXを社内外で推進している。

 川崎氏は2012年Domoに入社し、16年にジャパンカントリーマネージャーに就任、その後Elasticにて2年間の経験を経て、21年6月より現職。日本のIT業界にて20年以上の経験を活かし、日本企業のデジタル変革の成功に尽力している。

 基幹系業務システムからDX支援までをワンストップで提供するNDIソリューションズ。同社の特徴は「ショウルームポリシー」であり、自分達でまず導入・利用し、その価値を確認し顧客に提案することを徹底している、と岩井社長は冒頭に述べた。

 同社の考える、あらゆる企業で実現可能なDXの考え方は以下の通り。

1. 課題を“デジタル”で解決する
2. 業務のプロが“デジタル力”を身に着ける
3. 見える化で“現場力”を高める

 3が今日の対談の本題で、現場力=自主自立した現場での“問題発見能力”や、“問題解決能力”の向上が非常に重要、という認識を軸に岩井氏と川崎氏は対話を進める。NDIソリューションズは約50のクラウドサービスを現在活用中で、完全リモートワークをほぼ実現している。2021年に導入したDomoは、見える化できているが故に誰もが腹落ち=納得した上での現場力向上、問題発見能力・問題解決能力向上に多大な貢献をしている、と岩井氏は評価した。

 川崎氏から質問が発出され、それに岩井氏が答える形(Q&A)でセッションは進み、以下のようなDomoの導入効果と今後の展望が示された。

対談風景
 

 ・岩井氏は日常的に約50のカード(グラフ)を見ており、また、20のデータソースからデータを直接Domoに接続しチェックしている。Domeによるそれらのデータ連携は容易で上手くいっているし、部下の入力ミスの際のアラート機能も役立ったことがある。

 ・営業企画部門での、営業利益のシミュレーションや予測が容易かつスピーディーになった。異なる部門が異なるシステムで管理しているデータをDomoで集約集計し、営業利益のシミュレーションをごく短期間で見える化できるようになった。Domoは導入ハードルの低いツールである。

・NDIソリューションズでは、営業企画部門の“ToDoリストの共有”、やるべきことや優先順位の共有を検討している。現場に人事関連データ以外のデータを解放し、自ら見える、気づくことで行動を起こすことを促していくことを考えている。

 ・どれくらいの頻度、時間でDomoをチェックしているかが画面(カード)で分かるので、経営幹部は見る頻度と時間を増やすようにしていきたい。経営幹部のDomoによる情報共有、意思疎通を進めたい。

 ・Domoなどで見える化したデータは、叱責するツールではなく“褒めるツール”や“コミュニケーションを促進するツール”に使うといい。現場レベルのそうした情報共有やムーブメントは会社全体に良い波及効果があるのでは。例えば、やや辛い業務を担う新規開拓担当部門がどれだけお客様と会話をしたか、を物差しにして激励する、などのムーブメントが現場から起これば好循環を生みそうだ。

岩井様㈪
 

 ・NDIソリューションズの社員全員に展開している段階ではないが、変化としては「ちょっと調子いいです」的アナログな表現ではなく、定量的、デジタルな表現が増えてきた。

「グローバル展開されているDomoならではの事例、インテグレーション成功事例を把握し付加価値を高め、数多いクラウドサービスを統合してワンストップDXサービスとしてこれからもお客様に提供していきたい」と岩井氏は述べ、対談を締めくくった。

2022年2月15日 オンラインにて開催・配信
写真:今井 知佑

source : 文藝春秋 メディア事業局