私はなぜ黒田緩和に反対したか

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前日銀審議委員が副作用に警鐘を鳴らす

木内登英氏 ©文藝春秋

 日本銀行による、「2年で2%」のインフレ目標を掲げた未曾有の規模の金融緩和が始まって4年半が経ちました。当初は「効果」があったものの、ある時期を境に「副作用」が効果を上回るようになり、現在は副作用だけが積み上がっています。

 なぜこんな状況になってしまったのか。私はターニングポイントだったのが、2014年10月の「緩和拡大」の決定だと考えています。本来はその時点で軌道修正すべきだったのですが、一方的な金融緩和を続けることになってしまった。これは金融市場だけでなく、日本の将来にも禍根を残す決断だったと思います。

 こう語るのは、12年7月から5年間、日本銀行政策委員会の審議委員を務め、今年の7月に退任したエコノミストの木内登英氏(53)だ。木内氏は、黒田東彦(はるひこ)総裁が打ち出した「黒田バズーカ」と呼ばれる量的・質的金融緩和に対して、当初は金融政策決定会合の場で賛成票を投じたものの、「緩和拡大」決定時からは一貫して総裁の提案する議長案に反対票を投じてきた。金融政策の舵取りの場で何が起こっていたのか。

 任期を終えた今、5年間を振り返ると、私の政策的主張はほとんど変わっていません。決定会合の場でも、周囲の空気に流されず、主張の整合性を重視してきました。12年夏、民主党政権下で審議委員に就任した当初は、メディアで「積極緩和派」と言われたのに、同じ主張が途中から「慎重派」という評価に変わりました。これは周囲の環境が大きく変わったためです。

 ひとつめの変化は12年年末の政権交代です。08年秋のリーマンショックとその後の世界的な金融危機で、日本経済はマイナス成長に陥っており、デフレだと言われていました。物価をコントロールできない日銀の金融政策への批判が強まっていた。そんな状況下で行われた衆院選で、安倍総裁が率いる自民党は物価目標の導入などを掲げるリフレ派の提案した経済政策を前面に押し出し、大勝を収めました。

 この結果をどう受け止めるかについては、日銀内でも議論が真っ二つに分かれたと思います。

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source : 文藝春秋 2017年10月号

genre : ニュース 経済