戦後日本を代表する思想家、清水幾太郎(1907〜1988)。その大きな思想の振れ幅の背景を、政治学者の片山杜秀氏が読み解く。
「深淵にも拘(こだわ)らず」。清水幾太郎の1941(昭和16)年の名言だ。何しろ戦時。「ペシミズムが不可とせられ、この世に強く生きる積極的な精神が鼓吹せられてゐる」。やる気を出すためには気持ちが明るいのがいいと、みんなが思っているらしい。しかし、それは嘘っぱちだ。人間が究極的に本気になるのは、深淵に落ちかかり、しかし観念せず、何としても逃げたいと念ずるときではないのか。常に最悪を予想せねばならない。血も凍る恐怖を感じる。だが本当に血が凍っては動けなくなる。情況に引きずられるのみになる。それは消極的な精神だ。実は血が凍ると思えたときにこそ血は熱くなれる。虎口を脱したくなるからだ。それが真のヒューマニズムと清水は言う。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2023年1月号