「“醜い平和”を選ぶべき」「GDP幻想を捨てろ」「若さより成熟を」──
(司会・新谷学 本誌編集長)
新谷 本日の座談会のテーマは、「目覚めよ!日本」ということなんです。ここに私が込めた気持ちを簡単にご説明させていただくと、この30年間、日本は時計の針が止まっている状況が続いている。企業は成長しない、賃金は上がらない、政治も体たらく。しかもその低迷がまだ続きそうだと。なぜこのような「失われた30年」が続くのかと考えたときに、やはりこの国は厄介な問題や、面倒くさいけれど大事な問題を、正面から向き合わずに、みんな見て見ぬふりで先送りし続けてきた。その結果なのだと痛切に感じています。「目覚めよ!日本」というのは、もうこれ以上、問題の先送りをやめて、とにかくテーブルの上に乗せて、みんなで真面目に考えてみましょうと。どうすればこの国を守ることができるのか、どうすれば経済は上向くのか。賃金は上がるのか、政治はよくなるのか。文藝春秋がその一つの起点になりたいという思いを込めて、今日はこのテーマを議論していただくのに最適な方々にお集まりいただきました。ぜひ自由闊達に気兼ねなくご発言いただきたいと思います。
まずは話題の「防衛費問題」を入口に始めましょうか。
中野 これは、来ると思った。
新谷 ロシアによるウクライナ侵攻は長期化の様相を呈していますし、我が国の周辺では中国の習近平国家主席が異例の三期目に突入し、台湾統一に意欲を示しています。「台湾有事は近い将来必ず起こる」という専門家の見方もあります。
そこで岸田政権は来年度から5年間で、防衛費をこれまでの1.6倍の水準にあたる43兆円確保すると発表しました。国会ではさっそく財源問題が大きな争点になっていますが、まず東さんから、いかがですか。
防衛費の適正額とは?
東 ウクライナ戦争が始まった直後からGDP比2パーセントに増やすんだということに関して、国民は結構合意していたわけだし、今でも賛成のほうが多数でしょう? だとすれば、誰かが税金で負担しなければいけない。みんなあのときに盛り上がって防衛費を増やそうと声を上げていたんだから、しょうがないんじゃないですか。まず大前提としてそういうふうに思っています。
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source : 文藝春秋 2023年2月号