岸田首相は支持率にうろたえるな

政と官の劣化をとめる

曽我 豪 朝日新聞編集委員
ニュース 政治
曽我豪氏

 いま日本の政治に一番必要なことは「支持率政局」との訣別である。

 1年足らずで衆参の選挙を制した岸田文雄自公政権でさえ、取り付けたはずの世論の支持を失い、明日をも知れぬ求心力の低下に沈む。旧統一教会との関係の清算が不発に終わった内閣改造や拙速に進めた安倍晋三元首相の国葬が内閣支持率急落の原因ではある。ただ、何より致命的なのは、付け焼き刃に過ぎる起死回生策の不発ぶりだ。

岸田総理 ©時事通信

 旧統一教会問題を受けた被害者救済法は成立したが、弁護士ら現場には実効性を疑う声がくすぶる。閣僚の辞任問題に追われ、臨時国会を反転攻勢の舞台には出来なかった。

 ブレーキが政権の足元から続出した形だが、それも自業自得である。首相は世論の疑念や失望を解消する「語る口」を持たず、それは異論に対し敏感に反応する「聞く耳」の欠如と映る。いくら断行を強調しても、世論の支持を生む努力が続かない限り、世論が苦しまぎれの権力者の弥縫策だと見透かすのも当然である。

 世論の政権離れに対し、立憲民主党と日本維新の会には、野党共闘による追及の成果と誇る声がある。それでも野党の政党支持率は急上昇はせず、代わりに「支持政党なし」の無党派層が極大化し、自民党支持層との間で「第一党」を競うが如き現実がある。それも、骨太な政権公約と政権構想により保守層を含めた広範な支持を生む努力が足りない、と世論に足元を見られた結果だろう。

 もとより2023年は、自民党総裁選と衆院選が続いた21年や参院選のあったその翌年とは違い、国政の審判の機会のない幕間の年と目された。総裁選は24年に予定され、衆院議員の任期満了と参院選は25年だ。23年の大きな政治イベントは4月の統一地方選と5月の広島サミットくらいしかない。

 22年夏の参院選勝利の後、しばらくは選挙の重圧から解放される「黄金の3年間」が首相に約束されたとの言説がメディアに横溢したのもそのためだ。今は真逆に、追い込まれた首相が早期の衆院解散に踏み切るとか、地元開催のサミットを花道に退陣し総裁選になるとか、これまた気の早い言説が紙面や画面に躍る。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : ニュース 政治