「ワンルームから宇宙をのぞく」久保勇貴さんインタビュー

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久保勇貴さん

 1994年、福岡生まれの久保さんはJAXA宇宙科学研究所の研究員。宇宙探査機や人工衛星の動きをコントロールする「宇宙機制御工学」を専門に、JAXAのさまざまなプロジェクトに携わっている。本書は、そんな久保さんが壮大な宇宙と日常を繋ぎ合わせて綴った新感覚の「宇宙工学エッセイ」だ。

「意外に思われるかもしれませんが、宇宙制御の研究は、普通のノートパソコン1台でもできます。例えば『はやぶさ』のように、地球の軌道を離れて小惑星探査に向かう宇宙機を正確に飛ばす方法について、パソコンに方程式を入力してシミュレーションする。設計を工夫すると、すごくアクロバティックで滑らかな動きを生み出せるんです。そういう風に、自分でも驚くような映像を見られることが研究の楽しみです」

久保勇貴『ワンルームから宇宙をのぞく』(太田出版) 1980円(税込)

 悩ましい「カオス」な人間関係を力学上の難問「三体問題」に重ね、アインシュタインの「一般相対性理論」で凝り固まった価値観を解きほぐす。「好き、好きじゃない。ああ、カオス」。無機質に見える物理学の用語も、久保さんのユーモアあふれる文体を通すと温かみを帯び、思わず頬が緩んでしまう。

「僕には、しんどい思いをするのは世の中の仕組みが複雑すぎるからだ、と感じることがあります。そういう複雑さに溺れてしまいそうになったとき、科学的な思考で世界に秩序を見出すと、どこか気持ちが落ち着く。うまくはまらないことも沢山ありますけど、僕にとって科学は、ごちゃごちゃになった頭の中を整理する方法なんだと思います」

 小さい頃の夢は宇宙飛行士。今もその夢は諦めていない。

「昔から、自分がいつか死んでしまう、ということが怖くて。私たちが住んでいる地球は、宇宙から見れば小さな点でしかない。そこから自由になりたい、という感覚がずっとありました」

 高校時代にはバンドを組み、東京大学では演劇サークルの活動に熱中したという久保さん。「1週間ぶっつづけで授業を休んで稽古するなど、当時の成績はあまり芳しくなかった。なんとか留年は避けたものの、命からがらでした(笑)」。

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source : 文藝春秋 2023年6月号

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